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銀行員必見‼ 顧客との対話に役立つSDGs・脱炭素のイロハ
金融機関の皆様は、SDGs/脱炭素関係で顧客(企業)と様々なやり取りをされていると思います。
そこで、本コラムでは、金融機関の方向けに顧客との対話の際に役立つSDGs・脱炭素に関わるイロハを紹介します。
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目次
- サステナブルファイナンスを巡る他行の動向
- 顧客がSDGsと混同する類似キーワード
- 同業他社事例のまとめサイト ~SDGs・脱炭素関係~
- 顧客がSDGs経営の実装に使えるガイドライン
- 顧客が差別化に使える認証制度
- 顧客の予算枠を拡大できる補助金・助成金 ~SDGs・脱炭素関係~
- 顧客が税金を軽減できる優遇税制 ~SDGs・脱炭素関係~
- 主なサステナブルファイナンスの内容と市場規模
- サステナブルファイナンスを取り巻く金融業界の動向
- そもそもSDGsとは
- そもそも脱炭素(カーボンニュートラル)とは
- そもそも事業再構築補助金とは
(注意事項)
本コラムで記載しているサステナブルファイナンスは、一般的ケースでの内容を記載しております。
各金融機関で取り扱う商品と異なる場合もありますので、予めご了承ください。
1. サステナブルファイナンスを巡る他行の動向
(1) 主要3行のサスティナビリティ目標 ~脱炭素関係を中心に~
まずは、主要3行の脱炭素を中心としたサスティナビリティ目標を見ていきましょう。
主要3行とも、自社グループでのカーボンニュートラルを宣言し、石炭火力発電の新設などへの原則融資停止など投融資先に対して脱炭素を促す取り組みを進めています。
また、主要3行とも数十兆円のサステナブルファイナンス目標(SDGsや脱炭素など環境・社会課題の解決を促進する融資・債券額の目標)を掲げており、量的にも投融資先のサステナブル経営への移行に対応しようとしています。
① MUFGのカーボンニュートラルへの取り組み
このうち、MUFGのカーボンニュートラル方針は、以下の通りです。
コーポレートガバナンスコードの改定などを受けた取締役会による環境方針の決定と気候変動を含む環境に係る積極的な情報開示することを決定しています。
また、2050年までの投融資ポートフォリオのカーボンニュートラルや2030年までの自社グループでのカーボンニュートラルを宣言しており、石炭火力発電に対する融資を2040年にゼロにする目標・サステナビリティファイナンス目標の拡充・再エネファンドの立ち上げなどを通して、様々な角度から脱炭素の取り組みを加速させています。
(2) 金利優遇のあるSDGs/脱炭素融資 ~地域金融機関の取扱商品の一例~
次は、SDGs/脱炭素関連のローンの一例を見ていきましょう。
地域金融機関によるSDGs/脱炭素促進のための金利優遇ローンには、以下のようなものがあります。
いずれのケースも、一定の条件(認証取得など)に基づいて融資先をスクリーニングし、基準を満たす企業にとっては通常金利より0.1~1.0%の金利優遇や長期の融資期間などメリットがあります。
(3) サステナブルファイナンスの代表格
金利優遇型ローンのほかに、サステナブルファイナンスには以下のようなものがあります。
これらの内容や市場規模・他行の組成状況などは、第8章の「主なサステナブルファイナンスの内容と市場規模」でご紹介します。
(4) 顧客(企業)にとってのメリット・デメリット ~サステナブルファイナンスの費用対効果~
では、顧客(企業)にとってサステナブルファンナンスを受けるメリット・デメリットは何でしょうか。
① 顧客(企業)にとってのデメリット
まず先に、顧客(企業)がサステナブルファイナンスを受けるデメリットから見ていきましょう。
主なデメリットは、以下の通りです。
- 従業員のハードワークが要求される。
- 追加のコストがかかる。~初期認証コスト・認証維持コストなど~
一般的に追加的な資料準備や認証対応などにより、顧客(企業)の従業員に通常以上の負荷がかかります。
また、外部の第三者機関による認証が必要な場合、初期認証や認証維持に係る追加コストが発生します。
≪必要となる外部認証の例≫
一般的な外部の第三者機関による認証としては、「ISO14001」・「エコアクション21」・「グリーン経営認証」などがあります。
② 顧客(企業)にとってのメリット
では次に、顧客(企業)がサステナブルファイナンスを受けるメリットは何でしょうか。
主なメリットは、以下の通りです。
- 金利優遇・長期の融資期間などの有利な貸出条件
- SDGs/脱炭素の取り組みを対外的にアピールできる。企業イメージの向上につながる。
- 金融機関と顧客(企業)との信頼関係を構築につながる。
- SDGs/脱炭素の取り組みが格段に加速する。
~認証機関対応・金融機関などと約束した目標の達成に向けた行動~ - 従業員のモチベーションの向上が期待される。
まず、金利優遇や長期の融資期間などの有利な貸出条件はメリットの一つです。
また、サステナブルファイナンスを受けるということは金融機関から一定の評価を受けている取り組みであるため、対外的なPRを通じて顧客(企業)のイメージの向上にもつながります。
認証取得など今までにない取り組みを協働することで、金融機関と顧客(企業)との間で連帯感が生まれ、互いの信頼関係を高めることができます。
金融機関が行うニュースリリースなどで企業名が載ることで、企業にとっては単独で対外公表するより格段に発信度が高まります。
また、これらの融資の設定を通してSDGs/脱炭素の取り組みを金融機関とコミットします。
目標を設定しその目標達成度合いによって金利などが変動する「サステナビリティ・リンク・ローン」のように、目標達成に向けたインセンティブが顧客(企業)に働くケースもあります。
金融機関との約束・インセンティブにより、顧客(企業)のSDGs/脱炭素の取り組みは深化し加速化します。
さらに、社会に役立つ取り組みをしていると顧客(企業)の社員が実感することで、 顧客(企業)の社員のモチベーションが向上し従業員定着率が高まる副次的効果も十分にあるでしょう。
このようなメリット・デメリットを顧客(企業)との対話の中で話していくと、組成に向けた取り組みもスムーズにいくでしょう。
2. 顧客がSDGsと混同する類似キーワード
顧客がSDGsと混同しやすいキーワードには、以下のようなものがあります。
(1) ESG
ESGとは、”Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス/企業統治)”の略称です。
ESG投資とは、ESGの観点から企業の将来性や持続可能性などを分析・評価した上で、投資先(企業等)を選別する方法のことです。
ESGが重視されるようになった背景は、国際連合が2006年に「責任投資原則(PRI)」を提唱したことが挙げられます。
責任投資原則(PRI)とは、投資家がESG投資する際の投資基本原則(6つの原則)のことです。
2020年8月時点で全世界で3332の年金基金や運用会社等(日本では85機関)がPRIに署名しており、全世界における運用資産残高の合計は103兆ドルに達しています。
日本でも170兆円以上の年金資産を管理・運用するGPIFが2015年にPRIに署名しており、日本におけるESG投資は、2019年には3兆ドルに達し、2016年から3年で約6倍になっています。
ESGの詳細な内容及びSDGsとの関係・違いは、別コラム「ESGとは何か。SDGsとの違いとは」をご覧ください。
(2) CSR (企業の社会的責任)
CSRとは、「Corporate Social Responsibility」の略称であり、「企業の社会的責任」と訳されます。
企業は”利益を追求するだけでなく、環境・社会に及ぼす負の影響に対して責任を持つべき”との考え方です。
社会的責任の国際規格であるISO26000などで具体的なガイドラインが示されています。
CSRは、ステークホルダーに対して、社会課題への対応を通じて“ちゃんとした会社”であることの説明責任を果たす役割を担っています。
CSRの詳細な内容及びSDGsとの関係・違いは、別コラム「SDGsとCSRの違いとは?企業が取り組みたい”攻め”のSDGs経営」をご覧ください。
(3) CSV (共通価値の創造)
CSVとは、「Creating Shared Value」の略称であり、「共通価値の創造」と訳されます。
2011年にハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授らによって提唱された”企業の事業活動を通じて社会課題の解決をしようというもの”であり、社会的価値(公共の利益)と企業価値(企業の利益)を共有し、両方の実現を目指していく競争戦略です。
CSVの詳細な内容及びSDGsとの関係・違いは、別コラム「SDGsとCSRの違いとは?企業が取り組みたい”攻め”のSDGs経営」をご覧ください。
(4) 近江商人の『三方よし』
「売り手よし、買い手よし、世間よし」で知られる『三方よし』とは、近江商人の経営哲学の一つで、「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方です。
近江商人とは、近江国(現在の滋賀県)に本宅を置き、他国へ行商して歩いた商人の総称で、大坂商人、伊勢商人と並ぶ日本三大商人の一つです。
『三方よし』の詳細な内容及びSDGsとの関係性は、別コラム「SDGsは『三方よし』を進化させた発信型『六方よし』」をご覧ください。
(5) 渋沢栄一の『論語と算盤』
『論語と算盤』は、渋沢栄一が行った講演を1冊にまとめた本で、「論語」は道徳・倫理を、「算盤 (そろばん) 」は利益を追求する経済活動を意味しており、”論語と算盤とは不可分で両立(道義を伴う利益追求)が重要であり、可能なことである”というのが渋沢栄一の基本的な考えです。
『論語と算盤』の詳細な内容及びSDGsとの関係性は、別コラム「SDGsは『三方よし』を進化させた発信型『六方よし』」をご覧ください。
(6) 稲盛和夫の『利他の心』
京都セラミック株式会社(現・京セラ株式会社)の創業者であり、2009年に経営破綻した日本航空(JAL、現・日本航空株式会社)をV字回復させた立役者である稲盛和夫の”より良い仕事をしていくためには、自分だけのことを考えて判断するのではなく、まわりの人のことを考え、思いやりに満ちた「利他の心」に立って判断をすべき”という考え方です。
『利他の心』の詳細な内容及びSDGsとの関係性は、別コラム「SDGsは『三方よし』を進化させた発信型『六方よし』」をご覧ください。
3. 同業他社事例のまとめサイト ~SDGs・脱炭素関係~
次に、顧客が他社事例を検索するのに使えるサイトを見ていきましょう。
(1) 同業他社事例まとめサイト ~SDGs関係~
SDGs関係の企業事例が紹介されているものには、以下のようなものがあります。
- 経団連 : Innovation for SDGs事例集 経団連によるSDGs事例集(目標ごとの事例検索可)
- GCNJ・IGES : SDG Industry Matrix
産業別の企業の取り組み事例(海外事例を含む) - 経産省 関東経済産業局 : SDGsに取り組む中小企業等の先進事例の紹介
- 経産省 近畿経済産業局 : 関西発SDGs貢献取組事例集
- 環境省 : SDGsへの挑戦~それぞれのきっかけからメリットまで!~
- 外務省 : 取組事例
- 農林水産省 : SDGsに関連する取組の紹介
- 農林水産省 : 「SDGs×食品産業」最新情報
- 林野庁 : SDGs×企業等の取組事例紹介
このうち、SDGs目標別では、経団連の「Innovation for SDGs事例集」が検索しやすいですし、その他、上記の経産省・外務省のサイトもよく閲覧されています。
また、様々な企業調査やランキングが公表されています。
下表はその一例です。
ランキング・アワード名 | 調査内容 | 直近の主な選定会社 |
---|---|---|
日経「SDGs経営」調査 (日本経済新聞社) | 事業を通じてSDGsに貢献し企業価値の向上につなげる取り組みをSDGs経営と定義。 「SDGs戦略・経済価値」「社会価値」「環境価値」「ガバナンス」の4つの視点から評価 | ≪総合格付け 星5.0個≫ ・ リコー(大賞) ・ キリンHD ・ コニカミノルタ ≪SDGs戦略・経済価値賞≫ ・ 東京海上HD ≪社会価値賞≫ ・ 資生堂 ≪SDGs戦略・経済価値賞≫ ・ キリンHD |
企業版SDGs調査 (ブランド総合研究所) | 各業界を代表する有力企業210社を対象に、SDGsへの取り組みやESGイメージのほか、好感度や購入経験、投資意欲、就職意欲などの企業評価について、一般消費者による評価を行い、それを数値化 | ≪総合ランキング上位5社≫ 1位 トヨタ自動車 2位 ユニクロ 3位 サントリー 4位 日清食品 5位 イオン |
ジャパンSDGsアワード (外務省) | SDGsの達成に向けて、優れた取組を行う企業・団体等を表彰。 最も優れた1案件を、総理大臣によるSDGs推進本部長表彰、その他の4案件程度を副本部長表彰 | 【本部長賞】 ・ みんな電力株式会社 【副本部長賞】 ・ 北海道上士幌町 ・ 特定非営利活動法人Support for Woman’s Happiness など |
外務省の「ジャパンSDGsアワード」は、中小企業も表彰されています。
中小企業の好事例を見つける手段として利用可能です。
中小企業も応募できますので、素晴らしい取り組みをしている顧客がいたらぜひ応募を促してみてください。
企業のランキングや調査結果の詳細な内容は、別コラム「ランキング・調査結果でみるSDGsの現在地 ~世界、企業、自治体、就活生、消費者~」をご覧ください。
(2) 同業他社事例まとめサイト ~脱炭素関係~
脱炭素関係の企業事例が紹介されているものには、以下のようなものがあります。
- 環境省 : 業種別取組事例一覧
- 環境省 : 脱炭素化事業(エネ特)活用事例集
- 環境省 : ひろがるカーボンニュートラル~トップが語る脱炭素~
- 経産省 : カーボンオフセットの取組事例
- 経産省 : 脱炭素化の方向性を持った具体的な取組事例集
このうち、環境省の「業種別取組事例一覧」は業種別に検索できますので、顧客が同業他社事例を検索するには利用しやすいと思います。
4. 顧客がSDGs経営の実装に使えるガイドライン
次に、顧客がSDGs経営を導入する際に利用できるガイドラインを見ていきましょう。
(1) SDGコンパス ~SDGs経営の導入指南書~
『SDGコンパス』は、SDGs経営の導入初期のロードマップを描く指針として非常に参考にされています。
『SDGコンパス』は、企業のSDGs導入指針として発行されたもので、従来の社会・環境に関する国際的手引きとは異なり、”企業がSDGsを企業経営に組み込むことのメリット”がステップごとに明示されています。
少し概念的ですが、SDGsの実装を5つのステップで説明し、”SDGs導入の各フェーズで何を検討しなければいけないか”が端的にまとめられています。
(2) その他のガイドライン
その他のSDGs経営の実装に利用可能な主なガイドラインは、以下のようなものがあります。
- 経産省 : SDGs経営ガイド
- 経産省 : 価値協創ガイダンス
- 環境省 : 持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド
- 中小企業基盤整備機構 : 中小企業のためのSDGs活用ガイドブック
- wbcsd : 持続可能な開発目標 CEO向けガイド マネジメント視点に立ったCEO向けのSDGsガイド
- 電通 : SDGsコミュニケーションガイド 広告効果・”SDGsウォッシュ”の回避方法などを紹介
環境省が作成した『持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド』は、SDGsの概要・今経営に必要な理由・ケーススタディによる事例紹介など、非常にコンパクトにまとめられたガイドラインでSDGs初心者が一読する価値があります。
また、電通などが取りまとめた「SDGsコミュニケーションガイド」はSDGsが経営にもたらすメリットや広告に当たっての注意事項や見せかけだけのSDGs(いわゆる”SDGsウォッシュ”)とみなされないための注意点などが記載されています。
企業がSDGsの取り組みを対外的に発信する際に一読したい資料です。
なお、SDGsウォッシュの定義・注意点などの詳細な内容は、別コラム「販売停止!? 侮ると怖いSDGsウォッシュの事例とリスク回避策」をご覧ください。
5. 顧客が差別化に使える認証制度
次に、顧客(企業)が差別化に使える認証制度を見ていきましょう。
(1) SDGsにも関連する主な認証制度一覧
SDGsと関連性が高い主な認証制度は、以下の通りです。
なお、国連が公認するSDGs認証制度はありません。
上表は、各認証制度の一番関連性が高いと判断されるものを紐付けたものであり、 各認証制度は複数のSDGs目標に関連しています。
(2) 主な認証制度 ~フェアトレード~
フェアトレードに関連する代表的な認証制度には、以下のようなものがあります。
詳細な内容は、別コラム「他社と差別化! 攻めのSDGs経営に使える認証制度」をご覧ください。
(3) 主な認証制度 ~水産物・海洋資源など~
水産物・海産物に関連する代表的な認証制度には、以下のようなものがあります。
詳細な内容は、別コラム「他社と差別化! 攻めのSDGs経営に使える認証制度」をご覧ください。
(4) 主な認証制度 ~農産物・加工食品・紙製品など~
農産物・加工品・紙製品などに関連する代表的な認証制度には、以下のようなものがあります。
詳細な内容は、別コラム「他社と差別化! 攻めのSDGs経営に使える認証制度」をご覧ください。
6. 顧客の予算枠を拡大できる補助金・助成金 ~SDGs・脱炭素関係~
次に、顧客が脱炭素やSDGsを取り組む上で利用できる補助金・助成金を見ていきましょう。
補助金・助成金は無数にありますが、顧客にとって有用なものを選択できれば、資金調達の枠が拡がり顧客にとっては余裕を持った設備投資等ができます。
金融機関とっては返済の目途がついた融資対象となりますので、金融機関としてもメリットは十分にあるでしょう。
(1) 主な補助金・助成金 ~脱炭素関係~
環境省による脱炭素に関係する主な補助金(令和3年度)は、以下の通りです。
上記以外にも経産省や国土交通省、各自治体が実施している補助金制度などがあります。
その内容や検索方法などは、別コラム「予算枠が拡大! SDGsが有利に働く補助金・助成金」をご覧ください。
(2) 主な補助金・助成金 ~SDGs関係
SDGsを包括的に支援する国の補助金はありません。
ここでは、各SDGs目標の達成のために資する補助金を紹介します。
脱炭素関係以外のSDGs目標に関係する主な補助金は、以下の通りです。
弱者の雇用開発、困窮する子供支援、女性の社会進出、地域活性化や海外進出による発展途上国の課題解決など、様々なSDGs目標に関係する補助金・助成金があります。
その他のSDGsに関係する補助金・助成金は、「SDGs活用ガイド(環境省)」などを利用しご確認ください。
また、各自治体でもSDGsに関連した補助金があります。
詳細は、各自治体のホームページや補助金ポータルの「補助金・助成金・支援金をさがす」などを利用しご確認ください。
(3) SDGsが有利に働く補助金
SDGs目標に関係する補助金のほか、事業再構築補助金・ものづくり補助金などの審査上SDGs・カーボンニュートラルの推進は有利に働く傾向にあります。
事業再構築補助金については、別コラム「徹底解説! 事業再構築補助金のポイント ①目的・補助額・要件」などをご覧ください。
7. 顧客が税金を軽減できる優遇税制 ~SDGs・脱炭素関係~
次に、顧客が税金を軽減できるSDGs・脱炭素に関連した税制優遇措置を見ていきましょう。
(1) 主な税制優遇(税額控除)措置の一覧 ~SDGs・カーボンニュートラル関係~
SDGs・カーボンニュートラル関係の主な税制優遇制度は、以下の通りです。
(2) カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 ~最大0.2%の利子補給制度も~
カーボンニュートラル関係では、税制優遇に加えて、最大0.2%の利子補給などの金融支援もあります。
≪概要≫
産業競争⼒強化法の計画認定制度に基づき、①⼤きな脱炭素化効果を持つ製品の⽣産設備、②⽣産⼯程等の脱炭素化と付加価値向上を両⽴する設備の導⼊に対して、税額控除⼜は特別償却を認める措置のことです。
≪税制優遇の内容≫
以下のいずれかを受けることができます。
・ 設備投資額の50%の特別償却
・ 設備投資額の5%(一定の場合、10%)の法人税額の特別控除 (法人税額の20%相当額が上限)
≪主な要件≫
中長期環境適応計画に基づき、下記の設備を取得し、使用をすること
・ 大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備
温室効果ガス(特に二酸化炭素)削減効果が大きく、かつ新たな需要の拡大が見込まれる製品 (例えば、燃料電池など) の生産に使用される設備 (機械装置)
・ 生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備
事業所等の炭素生産性を相当程度向上させる計画に必要となる設備
なお、「大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備」として、以下のような事例が挙げられています。
≪金融支援(利子補給等)≫
着実なCO2削減のための取組を進めるために、必要な資金の指定金融機関からの融資について予め設定したKPIを達成した場合に、金利を最大0.2%引き下げる成果連動型の利子補給制度があります。
詳細は、経産省ホームページ 「カーボンニュートラル実現に向けたトランジション推進のための利子補給事業等における指定金融機関の募集を開始しました」などをご覧ください。
≪補助金との併用の可否≫
補助金との併用が可能 (圧縮記帳を受ける場合、圧縮記帳後の金額が税務上の取得価額)
≪関連URL≫
詳細な内容は、経産省ホームページ 「「産業競争力強化」に向けて果敢な未来投資を後押し」「事業適応計画(産業競争力強化法)」や国税庁ホームページ「No.5925 カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」などをご覧ください。
(3) その他の優遇税制
- オープンイノベーション促進税制
- デジタルトランスフォーメーション投資促進税制
- 5G導入促進税制
- 中小企業投資促進税制・中小企業経営強化税制
- 研究開発税制
その他の優遇税制は、別コラム「税金が減る! SDGs・カーボンニュートラル関係の税制優遇措置」をご覧ください。
8. 主なサステナブルファイナンスの内容と市場規模
次に、金利優遇型ローン以外の主なサステナブルファイナンスの内容と市場規模などを見ていきましょう。
- (1) SDGs私募債とは
- (2) サステナビリティボンドとは
- (3) グリーンボンドとは
- (4) グリーンローンとは
- (5) サステナビリティ・リンク・ローンとは
- (6) ポジティブ・インパクト・ファイナンスとは
- (7) その他のSDGs/ESG金融 ~日本銀行より~
(1) SDGs私募債とは
① SDGs私募債の定義
私募債とは、取引金融機関や特定少数(50人未満)の投資家に買い取りを依頼して発行する社債のことです。
私募債には、金融機関や信用保証協会の保証が必要となるケースが多いです。
現在金融機関が扱う「SDGs私募債」の多くは、発行者が支払う手数料の中から一部をSDGsに取り組むNPO、医療機関、学校・研究機関などの団体・自治体に寄付をする「寄付型私募債」の一種です。
② SDGs私募債を発行する地域金融機関の例
SDGs私募債を発行をしている地域金融機関の例は、以下の通りです。
≪取扱地域金融機関の例≫ SDGs私募債 | ・ 北海道銀行 ・ 横浜銀行 ・ 北陸銀行 ・ 中京銀行 ・ 滋賀銀行 ・ 京都銀行 ・ 南都銀行 ・ 香川銀行 ・ 四国銀行 ・ 福岡銀行 |
顧客(企業)にとっては、取扱金融機関のホームページなどでの公表などにより、SDGsを推進していることを対外的に発信できる効果もあります。
(2) サステナビリティボンドとは
① サステナビリティボンドの定義
「サステナビリティボンド」とは、調達資金全てがグリーンプロジェクトやソーシャルプロジェクトの初期投資又はリファイナンスのみに充当され、かつ、「グリーンボンド原則」と「ソーシャルボンド原則」いずれか一方又は両方の4つの核となる要素に適合する債券のことです。
すなわち、一定のルールをクリアした環境・社会課題の解決に資する社債のことです。
② サステナビリティボンドの発行総額の推移(国内企業等)
サステナビリティボンドの発行総額は一貫して増加傾向にあります(2021年は9月24日現在の発行残高)。
(3) グリーンボンドとは
① グリーンボンドの定義
「グリーンボンド」とは、企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券のことです。
すなわち、一定のルールをクリアしたグリーンプロジェクト(再生可能エネルギー施設の建設など)に使途が限定された社債のことです。
② グリーンボンドの発行総額の推移
サステナビリティボンドの推移表にある通り、グリーンボンドの発行総額も一貫して増加傾向にあります(2021年は9月24日現在の発行残高)。
③ グリーンボンドの事例 (国内)
環境省ホームページの「国内発行体による発行リスト」で、これまでの発行事例を検索できます。
自行で当該ボンドの取扱がある場合、顧客(企業)に提案できそうな類似事例がないか検索してみましょう。
(4) グリーンローンとは
① グリーンローンの定義
「グリーンローン」とは、企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために用いる融資のことです。
すなわち、一定のルールをクリアしたグリーンプロジェクト(再生可能エネルギー施設の建設など)に使途が限定された融資(企業から見れば借入金)のことです。
② グリーンローンの発行総額の推移(国内)
グリーンローンの組成額も一貫して増加傾向にあります(2021年は9月24日現在の発行残高)。
③ グリーンローンの事例 (国内)
環境省ホームページの「国内におけるグリーンローン組成リスト」で、これまでの組成事例を検索できます。
自行で当該ローンの取扱がある場合、顧客(企業)に提案できそうな類似事例がないか検索してみましょう。
(5) サステナビリティ・リンク・ローンとは
① サステナビリティ・リンク・ローンの定義
「サステナビリティ・リンク・ローン」とは、借り手が野心的なサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を達成することを奨励するローンのことです。
具体的には、①借り手の包括的な社会的責任に係る戦略で掲げられたサステナビリティ目標とSPTsとの関係が整理され、②適切なSPTsを事前に設定してサステナビリティの改善度合を測定し、③それらに関する融資後のレポーティングを通じ透明性が確保されたローンです。
すなわち、一般的には金融機関と協議の上で目標を設定し、設定した目標達成度合いに応じて金利等貸出条件が変動する融資です。
企業にとって、目標の達成度合いに応じて金利等が変わることでインセンティブが働き、サスティナビリティ(主に脱炭素)経営の高度化・加速化が期待できます。
また、 顧客(企業)にとっては使途が特定されていない融資というメリットもあります。
一方で、外部レビュー機関(監査法人、認証機関など)の関与が推奨されており、顧客(企業)は認証機関への報酬も考慮に入れておく必要があります。
② サステナビリティ・リンク・ローンの組成総額の推移(国内)
サスティナビリティ・リンク・ローンの組成額も一貫して増加傾向にあります(2021年は9月24日現在の発行残高)。
③ サステナビリティ・リンク・ローンの組成主体の例
環境省ホームページで、代表例としてヒューリック株式会社の「再生可能エネルギーの利用及び耐火木造建築に関する取組み」が紹介されています。
サスティナビリティ・リンク・ローンを組成している金融機関の例は、以下の通りです。
≪組成主体の例≫ サステナビリティ・リンク・ローン | ・ 三菱UFJ銀行 ・ 三井住友銀行 ・ みずほ銀行 ・ りそな銀行・埼玉りそな銀行 ・ 農林中央金庫 ・ 日本政策金融公庫 ・ 千葉銀行 ・ 横浜銀行 ・ 武蔵野銀行 ・ 第四北越銀行 ・ 滋賀銀行 ・ 京都銀行 ・ 中国銀行 ・ 西日本シティ銀行 |
環境省ホームページの「国内におけるサステナビリティ・リンク・ローン組成リスト」で、これまでの組成事例を検索できます。
自行で当該ローンの取扱がある場合、顧客(企業)に提案できそうな類似事例がないか検索してみましょう。
(6) ポジティブ・インパクト・ファイナンスとは
① ポジティブ・インパクト・ファイナンスの定義
「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」とは、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が策定したポジティブ・インパクト金融原則および同実施ガイドラインに基づき、企業活動が環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響とネガティブな影響)を包括的に分析・評価し、ポジティブな影響を与える活動を継続的に支援することを目的とした融資のことです。
すなわち、SDGs/脱炭素達成への貢献度を分析・評価し、それに応じて金利等貸出条件を決定する資金使途を特定しない融資のことです。
SDGs達成への貢献度合いを評価指標とし、開示情報に基づきモニタリング(1年に1回程度)を行うことが最大の特徴です。
こちらも、第三者からのモニタリング等により、サスティナビリティ(主に脱炭素)経営の高度化・加速化が期待できます。
② ポジティブ・インパクト・ファイナンスの組成主体の例
ポジティブ・インパクト・ファイナンスを組成している金融機関の例は、以下の通りです。
≪組成主体の例≫ ポジティブ・インパクト・ファイナンス | ・ 三菱UFJ銀行 ・ 三井住友銀行 ・ 三井住友信託銀行 ・ みずほ銀行 ・ 静岡銀行 ・ 滋賀銀行 |
(7) その他のSDGs/ESG金融 ~日本銀行より~
日本銀行のホームページで公表されているサステナブルファイナンスに係る金融機関の具体的な取り組みは、以下ようなものがあります。
既にご紹介した「グリーンボンド」「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」「サステナビリティ・リンク・ローン」のほかにも、環境格付けにより金利を優遇する社債である「環境格付私募債」や金利の一部を借入企業等が指定する教育機関・医療機関・環境保全団体に寄付する「寄付型私募債」「寄付型融資」なども増えてきています。
9. サステナブルファイナンスを取り巻く金融業界の動向
次に、金融機関を取り巻く環境の変化を、主要中央銀行及び日本政府の動きなどから見ていきましょう。
(1) 主要中央銀行の「気候変動」に対するスタンス ~日本銀行の取り組みとは~
① 世界の動向
市場中立性が重要な中央銀行も、気候変動に関わる問題は中長期的に経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼしうる事象であることを鑑み、金融機関へのバックファイナンスや金融機関へのストレステストなど気候変動を考慮した対応を進めています。
主要な中央銀行の「気候変動」に対するスタンスは、以下の通りです。
海外では、FRB(米国)は、2021年6月には、気候変動リスクは懸念するものの金融政策決定では「直接考慮せず」としつつも、2021年7月には、気候変動の影響への脆弱性を判断するため将来的に銀行に気候リスクを考慮したストレステスト(以下、ストレステストという。)の実施を義務付ける可能性を示唆しています。
欧州中央銀行(ECB)も、金融政策に気候変動対策も加味することを示唆しており、大手金融機関に対して2022年にストレステストを予定していますが、準備が間に合わない金融機関が続出する可能性が高いです。
また、イングランド銀行も、気候変動対策への支援は中央銀行としての責務と表明しており、金融機関などに対するストレステストを既にスタートさせており、2022年5月にはその結果が公表される見込みです。
このように、世界の中央銀行も、「気候変動」を金融政策に影響を与える重要事項として取り組みを強化しています。
では、日本ではどうでしょうか?
① 日本銀行の「気候変動」に対するスタンス ~金利0%でのバックファイナンス~
日本銀行は、2021年7月16日、「気候変動に関する日本銀行の取り組み方針について」において、中央銀行としての市場中立性にも念頭に置きながら、下記の通り、金融機関の気候変動対応の投融資を促す新制度を示しました。
- 気候変動問題は、中長期的に、経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼしうる。
- ~中略~
- 日本銀行は、気候変動対応に資するための取り組みについて一定の開示を行っている金融機関を対象に、そうした取り組みの一環として実施する投融資をバックファイナンスする新たな資金供給制度を導入することとし、年内を目途に実施する。
具体的には、2021年9月22日に「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション基本要領」を策定し、環境対応の投融資を手がける金融機関に対し、金利0%で日銀が円資金を供給します。
また、貸付期間は原則1年間ですが、回数制限なしで借り換え可能にして実質的に長期資金を供給する仕組みです。
(2) 政府がSDGs/脱炭素を推し進める背景
① 日本政府がSDGsを推し進める背景
首相官邸の「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」における下記の「SDGsアクションプラン2021」では、政府がSDGsを推し進める背景が書かれています。
- SDGsの文脈においても、革新的なイノベーションを活用し、規制改革などの政策を総動員することで、効率的・効果的に目標を達成することができる。SDGsが達成された、しなやかで強靭な、経済と環境の好循環のあるウィズ・コロナ、ポスト・コロナの時代を実現するには、社会全体の行動変容が必要であり、あらゆる関係者が一体となって取り組んでいく必要がある。
- 世界が今、大きな変化に直面する中で、日本は新たな時代を見据え、未来を先取りする社会変革に取り組まなければならず、政府・企業・個人等それぞれの立場で変革への取組を始めることが不可欠である。これが国内のみならず国際社会の変革を支え、リードすることにもつながる。
すなわち、政府は、日本及び世界が望ましい未来を実現するためには、”社会全体が一丸となった行動変容”が不可欠であり、SDGsは”社会全体の行動変容のための切り札”と捉えています。
そのため、政府は、予算・税制・金融・規制改革・国際連携などあらゆるものを総動員してSDGsを押し進めているのです。
また、金融庁も「金融行政とSDGs」の中で、”SDGsは、企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指すという金融行政の目標にも合致するものであり、金融庁としてもその推進に積極的に取り組む”としており、SDGsの動向に外部不経済がある場合には金融庁として何らかの対応をすることを表明しています。
② 日本政府が脱炭素(カーボンニュートラル)を推し進める背景 ~グリーン成長戦略~
なぜ政府はカーボンニュートラルを推し進めているのでしょうか。
それは、国際社会の中で決めたルールを守る責務もありますが、カーボンニュートラルによる変革が、”経済成長のために不可欠なカギ”、すなわち、”イノベーション創出を促すドライバー”と政府が捉えているためです。
2020年10年26日に、菅総理大臣が2050年にカーボンニュートラルや脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、経済産業省が中心となって「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しています。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」 で、下記のように政府が全力でカーボンニュートラルに取り組む背景が書かれています。
- 温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会ととらえる時代に突入したのである。従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長につながっていく。こうした「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策が、グリーン成長戦略である。
- 産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が数多く存在する。他方、新しい時代をリードしていくチャンスでもある。大胆な投資をし、イノベーションを起こすといった民間企業の前向きな挑戦を、全力で応援するのが、政府の役割である。
すなわち、過去は気候変動対策は経済成長への足かせと考えられてきましたが、政府は、気候変動対策は”成長の機会”と捉え、「グリーン成長戦略」を打ち出しています。
そのような国の動きに連動し、大胆な改革を行うチャレンジングな会社を後押しするため、政府は、予算・税制・金融・規制改革&標準化・国際連携などあらゆるものを総動員してカーボンニュートラルを押し進めているのです。
③ グリーンファイナンスに係る金融庁の動向
2020年12月に、金融庁は主要3行に対して今後30年を見据えた財務分析と対策を求め日銀も金融機関の経営への影響を点検することを表明しました。
具体的には、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)が作成した予測シナリオを用いて分析するよう促しています。
また、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中において、ファイナンスの重要性が述べられています。
- パリ協定実現には、世界で最大 8,000 兆円必要との試算(国際エネルギー機関(IEA))もあり、再生可能エネルギー等(グリーン)に加えて、省エネ等の着実な低炭素化の取組等の脱炭素への移行(トランジション)、脱炭素化に向けた革新的技術(イノベーション)へのファイナンスが必要である。
金融庁としても、「グリーンファイナンス」「トランジションファイナンス」「イノベーションファイナンス」などその枠組みや原則を策定するとともに、量的な拡充を後押しすることを宣言しています。
(3) 注視したい物言う株主の存在 ~気候変動問題に関するアクティビスト化~
また、環境NPOを中心とした株主は、金融機関に対して”ESGに反する相手先には投融資するな”とプレシャーをかけています。
以下は、直近1年間での気候変動関係の株主提案事例(金融機関のみ)です。
金融機関の投融資先は、製造業でいうサプライチェーンの一部( 「SBT」におけるScope3相当)であり、投融資先の脱炭素に対しても金融機関は間接的な責任があると捉えられています。
金融機関もそれを認識し脱炭素促進を強化していますが、株主からの要請はそれを超えています。
例えば、2020年度のみずほFGの株主総会では、気候ネットワーク(環境NPO)がパリ協定の目標に整合した投融資計画を開示するよう求める株主総会がありました。
株主提案は否決されましたが、34%もの株主がこの提案に賛同し、議決権行使助言会社大手のGlass LewisとISSの2社(2社で同業界100%)がこの提案への賛成を推奨しました。
上記の提案はいずれも少数株主によるものだという点が留意が必要です。
企業が大株主だけを気にしているだけで大丈夫な時代は終わったのです。
このほか、少数株主の共同提案や「ゼロカーボンシティ」を表明した自治体などの株主提案もあります。
自社の株主構成とその潜在的な要望を確認し、同業他社での株主要請も分析しながら先手先手の対応が必要な時代になりました。
日本の金融機関ではまだこの2社だけですが、2021年度の株主総会ではそれ以外の金融機関でも起こり得るでしょう。
関連コラム「揺れる株主総会 待ったなしの脱炭素対応」で詳細を記載していますので、そちらもご覧ください。
≪参考≫
「SBT」とは、「Science Based Targets」の略称のことでは、パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことです。
認定企業は、環境省ホームページで確認できます。
排出量削減のターゲットの範囲として、Scope1~3があり、最近はサプライチェーン全体を含めたScope3の目標を設定する企業が増えてきています。
Scope3の目標を設定している企業名とその目標は、環境省ホームページの「SBT参加企業」の「SBT認定取得済み⽇本企業の取組」をご覧ください。
10. そもそもSDGsとは
(1) SDGsとは
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界の国連全加盟国によって採択された国際社会共通の目標です。
このサミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
この文書の中核を成す「持続可能な開発目標」をSDGsと呼んでいます。
知っておきたいSDGsの主な特徴は、以下の通りです。
- 国連加盟国全193ヵ国が合意した目標
- 発展途上国だけでなく、先進国も含めたすべての国に行動を求める世界全体の共通目標
- すなわち、世界の共通言語であり、地域・世代を超えて対話できるコミュニケーション・ツール
- 目標年(2030年)・具体的な数値も示した目標(17の目標と169のターゲット)がある
- 目標達成に法的義務はなく、取り組むか否か・その程度は各主体の判断に委ねられている
- 国・自治体だけではなく、企業・その他の団体・個人のあらゆる主体が取り組むことが期待される
- 「経済」、「社会」、「環境」の3つに関わる目標があり、同時両立による同時達成を目指す
- 企業には、慈善活動・ボランティアだけでなく、本業の中で取り組むことが期待される
(2) SDGsの「17の目標」と「169のターゲット」とは
SDGsは「17の目標」と17の目標をより具体化した「169のターゲット」で構成されています。
11. そもそも脱炭素(カーボンニュートラル)とは
(1) 脱炭素(カーボンニュートラル)とは
カーボンニュートラルとは、”二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、森林などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること”です。
なお、2021年4月22日~23日に行われた気候変動サミットなどで各国が掲げた削減目標の一例は、以下の通りです。
日本も2030年までにCo2排出量を46%削減(2013年度比)するという非常に高い目標を掲げており、目標を達成するためには、国・自治体だけでなく、特に産業界の行動変容がカギとなります。
(2) 政府がカーボンニュートラルを推し進める背景
では、なぜ政府はカーボンニュートラルを推し進めるために、税金を優遇し補助金を設けているのでしょうか。
それは、国際社会の中で決めたルールを守る責務もありますが、カーボンニュートラルによる変革が、”経済成長のために不可欠なカギ”、すなわち、”イノベーション創出を促すドライバー”と政府が捉えているためです。
2020年10年26日に、菅総理大臣が2050年にカーボンニュートラルや脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、経済産業省が中心となって「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しています。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」 で、下記のように政府が全力でカーボンニュートラルに取り組む背景が書かれています。
- 温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会ととらえる時代に突入したのである。従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長につながっていく。こうした「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策が、グリーン成長戦略である。
- 産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が数多く存在する。他方、新しい時代をリードしていくチャンスでもある。大胆な投資をし、イノベーションを起こすといった民間企業の前向きな挑戦を、全力で応援するのが、政府の役割である。
すなわち、過去は気候変動対策は経済成長への足かせと考えられてきましたが、政府は、気候変動対策は”成長の機会”と捉え、「グリーン成長戦略」を打ち出しています。
そのような国の動きに連動し、大胆な改革を行うチャレンジングな会社を後押しするため、政府は、予算・税制・金融・規制改革&標準化・国際連携などあらゆるものを総動員してカーボンニュートラルを押し進めているのです。
(3) グリーン成長戦略とは ~14つの重要分野~
「グリーン成長戦略」では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、今後、産業として成長が期待され、なおかつ温室効果ガスの排出を削減する観点からも取り組みが不可欠と考えられる分野として、14の重要分野を設定しています。
エネルギー関連産業 | ①洋上風力、②燃料アンモニア、③水素、④原子力 |
輸送・製造関連産業 | ⑤自動車・蓄電池、⑥半導体・情報通信、⑦船舶、⑧物流・人流・土木インフラ、⑨食料・農林水産業、⑩航空機、⑪カーボンリサイクル |
家庭・オフィス関連産業 | ⑫住宅・建築物/次世代型太陽光、⑬資源循環、⑭ライフスタイル |
14分野は幅広く、成長のフェーズもそれぞれの分野で異なります。
そのため、政府は、分野ごとに2050年までの「工程表」も合わせてつくり、省庁横断で対応しています。
基本的には、政府は、この14分野に集中的に規制改革に加えて予算・税制の強化を図っています。
すなわち、事業が14分野に関連する場合、補助金など様々な国からのサポートを受けられる可能性が高いです。
12. そもそも事業再構築補助金とは
別コラム「徹底解説! 事業再構築補助金のポイント ①目的・補助額・要件」などで紹介しておりますので、そちらをご覧ください。
いかがでしたか?
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≪SDGs×融資 ニュース≫
・ 西シ銀、環境配慮型ローン初融資 目標達成度合いで金利変動(2021年10月6日)
引用元 : 西日本新聞オンライン
・ SDGs取り組みでローン金利を割り引き 千葉銀行(2021年10月6日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 小林製作所などとSDGs融資契約 静岡銀行(2021年10月6日)
引用元 : みんなの静岡銀行
・ NTT、環境債3000億円発行 世界最大規模、脱炭素加速へ(2021年10月5日)
引用元 : 時事通信
・ りそな、簡易型のESG目標融資 達成で手数料優遇(2021年9月30日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 武蔵野銀行、SDGs推進の金融商品発売(2021年9月30日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 滋賀銀、自治体初のグリーンローン 守山市に28億(2021年9月30日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 東急不HD、三井住友信託 長期ビジョンの指標でファイナンス契約(2021年9月29日)
引用元 : 住宅新報web
・ 横浜銀行、SDGs推進融資を強化(2021年9月28日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 京都銀行がグリーンローン、フロンガス対象は国内初(2021年9月28日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 滋賀銀行、単独でPIF5億円実行 西日本の地銀初(2021年9月28日)
引用元 : 時事通信
・ 滋賀銀がSDGs融資、希少疾患薬開発の大原薬品工業に(2021年9月28日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 七十七銀、SDGsで金利優遇 中小の取り組み支援へ(2021年9月25日)
引用元 : 河北新報オンラインニュース
・ 七十七銀行、SDGs対応で金利優遇 診断サービス開始(2021年9月22日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 道銀が「サステナブル融資」発売(2021年9月17日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 埼玉りそな銀行、融資でESG推進 中小企業を後押し(2021年9月17日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 北海道銀と北陸銀、SDGsやESG推進へ新融資商品(2021年9月16日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ ECBの気候変動ストレステスト、準備間に合わないと銀行が警告(2021年9月6日)
引用元 : Bloomberg
・ 欧州投資銀行、「気候・環境諮問委員会」設置 ラガルド氏も参加(2021年9月2日)
引用元 : NHKオンライン
・ 第四北越銀、SDGs推進の融資・私募債(2021年8月27日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ SDGsを融資で応援…西日本シティ銀行、金利を優遇(2021年8月21日)
引用元 : 読売新聞オンライン
・ 中小の脱炭素 地銀が先導(2021年7月30日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 滋賀銀行の環境対応型融資10件に、総額118億円(2021年7月30日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 農林中金、初のグリーンローン 荷役台レンタルに(2021年7月29日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 日銀 黒田総裁 気候変動問題で銀行支援「まず重要な施策から」(2021年7月27日)
引用元 : NHKオンライン
・ ふくおかFG、九大のコロナワクチン開発に寄付 私募債で(2021年7月20日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 日銀、脱炭素融資で新制度 マイナス金利の負担軽減(2021年7月16日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ パウエル議長、気候変動リスクで銀行にテスト義務付けの可能性(2021年7月16日)
引用元 : Bloomberg
・ 静銀、中小のSDGs推進(2021年6月29日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 埼玉りそな銀行、SDGs私募債取り扱い開始(2021年6月10日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 気候変動でストレステスト 英中央銀行が3シナリオで(2021年6月8日)
引用元 : 朝日新聞デジタル
・ 気候変動、金融政策決定で「直接考慮せず」 影響は懸念=FRB議長(2021年6月5日)
引用元 : ロイター
・ 脱炭素、3メガ銀苦渋 みずほ「石炭火力融資行わない」明記 「まだ不十分」投資家圧力(2021年5月20日)
引用元 : 毎日新聞
・ 英中銀、社債購入で気候変動を考慮 計画案を公表(2021年5月22日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 石炭火力融資「40年度に残高ゼロ」 みずほが目標前倒し(2021年5月13日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 三菱UFJ、石炭火力の投融資厳格化(2021年4月27日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 三菱UFJ、既存設備にも原則停止へ 石炭火力向け投融資(2021年4月26日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 環境素材のTBM、グリーンローンで24億円調達(2021年4月4日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 道銀SDGs私募債4000万円 とかち製菓(2021年4月2日)
引用元 : 十勝毎日新聞電子版
・ 横浜銀行、SDGs融資拡充 環境改善など(2021年3月30日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ SCREEN、目標達成で優遇金利 関西でESG調達相次ぐ(2021年3月16日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 英HSBC、化石燃料事業への融資姿勢を厳格化 株主の要請受け(2021年3月11日)
引用元 : ロイター通信
・ 三井住友銀行が「環境預金」 2000億円、CO2削減に融資(2021年3月7日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 静岡銀、SDGs貢献に融資 中小企業向けで国内初(2021年2月2日)
引用元 : 共同通信
・ 気候変動リスク、銀行に分析促す 金融庁・日銀(2020年12月2日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ SDGs目標達成で金利引き下げ 滋賀銀行が地銀初の融資制度(2020年9月30日)
引用元 : SankeiBiz
・ 英大手銀に低炭素化の圧力 投融資の目標相次ぐ(2020年1月30日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 英スタンダードチャータード、石炭依存企業への融資縮小(2019年12月18日)
引用元 : 日本経済新聞オンライン
・ 滋賀銀、SDGsアワード受賞 金融機関で初 融資商品や支援イベント企画(2018年12月25日)
引用元 : SankeiBiz