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ランキング・調査結果でみるSDGsの現在地 ~世界、企業、自治体、就活生、消費者~

執筆者:小林孝嗣

公認会計士/㈱文化資本創研 代表取締役社長
国際文化政策研究教育学会 会員

㈱文化資本創研とは
サステナビリティ経営のための産学連携会社。
主な事業は、SDGs・脱炭素経営の実装支援、オープンイノベーション加速化事業、経済効果測定・データ分析。
大阪・関西万博2025への産学連携共同参画プロジェクトも展開。
京都大学含む10以上の大学・研究機関の教授・研究者と公認会計士・IRスペシャリスト・データアナリスト・プロダクトデザイナーなど実務のプロ集団が協働で企業のサステナビリティ経営の実装を支援している。
国際文化政策研究教育学会などと連携。 脱炭素経営促進ネットワーク (環境省) 支援会員

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目次

  1. 世界のSDGs達成度ランキング
  2. 企業のSDGsランキング・調査結果
  3. 自治体のSDGsランキング・調査結果
  4. 就活生のSDGs認知度・企業選びに与える影響度調査
  5. 消費者のSDGs意識調査
  6. SDGsのよくある質問

1. 世界のSDGs達成度ランキング ~ 日本は18位(2021年) ~

(1) Sustainable Development Reportとは

Sustainable Development Report」とは、持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN:Sustainable Development Solutions Network)とベルステルマン財団(Bertelsmann Stiftung)によって毎年作成されている世界のSDGsの進捗状況を示したレポートです。

(出所) Sustainable Development Report 2021

当レポートでは、国別のSDGs達成度ランキングや地域別・目的別のSDGsの進捗状況や現状課題などがまとめられています。

(2) 世界でのSDGsの進捗状況 ~パンデミックにより初めてSDGs達成度が後退~

2021年のReportによると、2020年の世界全体のSDGs達成度は、2015年にSDGsが採択されて以降初めて前年よりも後退しました。

(出所) Sustainable Development Report 2021

主なSDGs達成度の後退要因は、 新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる”貧困率の増加”とロックダウンなどによる”失業”です。
パンデミックは、持続可能な開発の経済、社会、環境の三つの面に多大な影響を及ぼしています。

2021年のReportでは、パンデミックに限らず気候変動や生物多様性の危機など地球規模課題に立ち向かうためには強力な多国間システムが必要だと説いています。

(3) 国別のSDGs達成度ランキング ~日本は18位(前年より1位後退。2021年)~

① 世界をリードする北欧諸国と日本の現状(18位)

昨年に続き、上位3カ国は北欧3ヵ国(フィンランド 、スウェーデン、デンマーク)で占められており、北欧諸国が引き続きSDGsの取り組みでリードしていることがわかります。

日本は、前年の79.2点から79.8点に上昇したものの、順位は昨年の17位から18位に後退しました。

(出所) Sustainable Development Report 2021

前年から躍進したのは、14位のクロアチア(前年は19位)と15位のポーランド(前年は23位)で、逆に大きく後退したのは、23位のニュージーランド (前年は16位) です。
日本より上の17ヵ国はすべてヨーロッパ諸国であり、いかに欧州でSDGsが浸透しているかがわかります。
ヨーロッパ諸国以外では日本が1位であり、見方によれば日本は善戦しているといえます。

また、現在の厳しい環境下においても、東アジアと南アジアにおけるSDGs達成度の上昇が顕著になっています。
2015年と比較して最もスコアの上昇が大きい国は、バングラデシュ・コートジボアール・アフガニスタンで、逆に最もスコアが減少したのは、ベネズエラ・ツバル・ブラジルです。

(出所) Sustainable Development Report 2021

(4) 日本のSDGs進捗状況

① 日本の目標別のSDGs進捗状況

Sustainable Development Report」では、SDGsの「17の目標」の目標別達成度が公表されています。
色別の達成度の意味合いは、下記の通りです。

(出所) Sustainable Development Report 2021

≪色別の達成度の意味合い≫
緑色 : 目標達成、黄色 : 課題あり、オレンジ色 : 重要な課題あり、赤色 : 深刻な課題あり

≪日本の達成状況が高い目標≫
日本は、17の目標のうち、以下の3つの目標が”達成”していると評価されています。

特に、教育については年少教育から高等教育までの高い就学率・高い識字率などが過去から評価されており、技術・産業のレベルや紛争や犯罪などが少なく安全性が高いことも引き続き評価されています。

≪日本の達成状況が低く課題が残る目標≫
日本は、17の目標のうち、以下の5つの目標が”深刻な課題あり”と評価されています。

具体的には、 以下のような指標(ターゲット)が”深刻な課題がある”と評価されています。

SDG番号深刻な課題が残る内容
目標5:ジェンダー平等を実現しよう ・ 女性議員の割合
・ 男女の賃金格差
・ 家事・子育て時間などの男女格差
目標13:気候変動に具体的な対策を ・ 化石燃料の燃焼・セメント生産によるCO2排出量
・ 輸入から生じるCO2排出量
・ 炭素価格スコア
目標14:海の豊かさを守ろう ・ 生物多様性に重要な海洋地区の保護面積割合
・ 水(海)の汚染度
・ 過剰漁獲などによる水産資源の消費
・ 輸入に伴う海洋生物多様性への脅威
目標15:陸の豊かさを守ろう ・ 生物多様性に重要な地上地区の保護面積割合
・ 生物多様性に重要な淡水地区の保護面積割合
・ 絶滅の危険性がある野生生物
・ 輸入に伴う地上・淡水の生物多様性への脅威
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう ・ 国民総所得に占めるODAの割合
・ 金融秘密度指数

国際的な議員交流団体「列国議会同盟(IPU)」によると、日本は国会議員の女性比率が9.9%と世界166位でG7諸国では最下位でした。

また、世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)がまとめた「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2021(The Global Gender Gap Report 2021)」によると、日本の「ジェンダーギャップ指数」は156カ国中120位でした。医療においては65位であるものの、政治では147位と政治の世界での女性進出が課題であると世界から見られています。

2020年10月の菅首相によるカーボンニュートラル宣言以降脱炭素に向けて企業が大きく動き出し始めましたが、石炭火力発電などまだ化石燃料に頼った電源構成になっているなど脱炭素の面では欧米に比して取り組みが遅れていると世界から評価されています。

② 日本の達成度の前年比較 ~着実に進み始めた日本のSDGs~

2021年の調査で、2020の調査から進捗状況が後退したものとして「目標15:陸の豊かさを守ろう」があります。

これは気候変動・資源開発などによって絶滅の危険性がある野生生物が増加していることに起因しています。

目標ではなく指標(ターゲット)レベルでみると、”持続的な窒素管理””水の汚染度スコア”などが下がっていますが、下落しているのは全119個中4個のみであり、 2021年の平均スコアは79.8点と前回79.1%を上回っており、日本におけるSDGsは着実に進み始めていると言えます。

2. 企業のSDGsランキング・調査結果

企業版のSDGsのランキング・アワードや企業調査結果などから、日本企業におけるSDGsの現在地を見ていきましょう。

(1) 企業版SDGsランキング・アワード

① 主な企業版SDGsランキング・アワード

主な企業版SDGsランキング・アワードは、以下の通りです。

ランキング・アワード名調査内容直近の主な選定会社
日経「SDGs経営」調査
(日本経済新聞社)
事業を通じてSDGsに貢献し企業価値の向上につなげる取り組みをSDGs経営と定義。
「SDGs戦略・経済価値」「社会価値」「環境価値」「ガバナンス」の4つの視点から評価
≪総合格付け 星5.0個≫
・ リコー(大賞)
・ キリンHD
・ コニカミノルタ
≪SDGs戦略・経済価値賞≫
・ 東京海上HD
≪社会価値賞≫
・ 資生堂
≪SDGs戦略・経済価値賞≫
・ キリンHD
企業版SDGs調査
(ブランド総合研究所)
各業界を代表する有力企業210社を対象に、SDGsへの取り組みやESGイメージのほか、好感度や購入経験、投資意欲、就職意欲などの企業評価について、一般消費者による評価を行い、それを数値化 ≪総合ランキング上位5社≫
1位 トヨタ自動車
2位 ユニクロ
3位 サントリー
4位 日清食品
5位 イオン
ジャパンSDGsアワード
(外務省)
SDGsの達成に向けて、優れた取組を行う企業・団体等を表彰。
最も優れた1案件を、総理大臣によるSDGs推進本部長表彰、その他の4案件程度を副本部長表彰
【本部長賞】
・ みんな電力株式会社
【副本部長賞】
・ 北海道上士幌町
・ 特定非営利活動法人Support for Woman’s Happiness など
ジャパン・サステナブルブランド・インデックス(Japan Sustainable Brands Index:JSBI)
(サステナブル・ブランド ジャパン)
全国の9000人を対象に、国内17業種180社の持続可能な環境・社会への取り組みとブランドイメージを調査 ≪総合ランキング上位5社≫
1位 トヨタ自動車
2位 良品計画
3位 味の素
4位 日立製作所
5位 住友林業
SDGs日本を代表する500社
(週刊東洋経済)
上場企業を中心とした1641社を対象に、「人材活用」「環境」「社会性」「企業統治」の4カテゴリー計90項目で企業評価 ≪総合ランキング上位5社≫
1位 オムロン
2位 SOMPO HD
3位 J.フロント リテイリング
4位 大和証券グループ本社
5位 東京海上HD
就活生が選ぶ人気企業とは?
~就職希望企業ランキング:SDGs編~

(株式会社ディスコ)
就職情報サイト「キャリタス就活2022」会員のうち、調査対象大学に在籍する大学3年生及び修士1年生を対象に、SDGsの取り組みについて良いと思った企業をデータベースから最大2社まで選択してもらい、投票数によってランキングを決定≪総合ランキング上位5社≫
1位 損害保険ジャパン
2位 サントリーHD
3位 三井住友海上火災保険
4位 トヨタ自動車
5位 ニトリ

② 日経「SDGs経営」調査の結果を受けて

日本経済新聞社による「日経「SDGs経営」調査」の結果をまとめた「第2回日経「SDGs経営」調査 ~調査結果解説~ 」によると、SDGsの取り組みが進んでいる会社(総合評価が4.5以上の39社)とそうでない会社では様々な分野で大きな差があることがわかります。

項目 総合評価が4.5以上の会社全体
経営者によるトップメッセージ100%74.6%
方針・計画への明文化
(年次・中期・長期経営計画など)
100%72.5%
統合報告書への記載89.7%44.7%
一般社員への研修100%58.5%
SBT Scope3でのGHG排出量公表100%43.1%

また、SDGsを経営に生かしている企業ほど、収益力が高い傾向が鮮明となっています。
さらに、全17業種のうち、「電機・精密・機械」の評価が高く、「食品」「化学・石油」などが評価の上位になっています。リコー(大賞)やコニカミノルタは「電機・精密・機械」 であり、リコーは日本で初めて「RE100」に参加した企業であり、 当該業種は環境対応の分野で日本をリードしているといえます。

なお、「日経「SDGs経営」調査 」の結果をまとめた「SDGs 日本の挑戦2020 エクセレントカンパニー・自治体・教育」は、Amazonで購入することができます。

(2) SDGsに関する企業調査結果

① SDGsに関する主な企業調査一覧

SDGsに関する主な企業調査結果は、以下の通りです。

レポート名調査概要
SDGsに関する企業の意識調査
(帝国データバンク)
・ 調査対象 : 全国2万3,737社
・ 調査内容 : SDGsに関する企業の見解
・ 回収状況 : 1万1,109社(回答率46.8%)
SDGs 日本企業調査レポート
(IGES)
・ 調査対象 : 全GCNJ会員:376企業・団体
・ 調査内容 : SDGsの認知度、取組み状況、今後の方向性、コロナ禍の取組みについて
・ 回収状況 : 208企業・団体(回収率:56%)

② 企業調査結果 ~取り組みの浸透とグループ浸透課題~

帝国データバンクによる2021年度版「SDGsに関する企業の意識調査」によると、『SDGsに積極的』な企業は39.7%で前回調査から15.3ポイント増加しており、SDGsに対する企業の取り組みや意識は前年より大きく前進していると言えます。
業種別でみると、「金融業」「農林水産業」がSDGsに積極的な企業が半数を超えるのに対して、「卸売業」「不動産業」への浸透が進んでいないことが分かりました。
また、目標別では、”現在力を入れている項目””今後最も力を入れたい項目”の両方とも「目標8働きがいも経済成長も」が1位で、企業が経済性でだけでなく働き方改革にも積極的であることがうかがえます。

また、IGESによる「SDGs 日本企業調査レポート2020の結果説明」によると、経営陣の認知度は85.1%まで向上している一方で、関係会社などのステークホルダーでの定着度は11%と低調でした。
親会社主導でサプライチェーンベースでSDGsの教育をし、SDGsをグループ全体への取り組みに昇華していくことが企業の喫緊の課題であることが浮かび上がりました。
目標別では、重点を置くSDGs目標として「目標13: 気候変動に具体的な対策を」が76%と1位であり、2020年10月の菅首相のカーボンニュートラル宣言をうけ、企業の脱炭素に対する意識が飛躍的に向上していると言えます。

(3) 企業のSDGsコミットがわかる5つの指標

SDGsそのものではありませんが、自然環境やダイバーシティ、従業員・職場環境を配慮した経営が出来ているかの調査もあります。ここでは代表的なものをご紹介します。

指標名調査内容直近の主な選定会社
健康経営銘柄
(経済産業省・東京証券取引所)
東証上場会社の中から、非財務も考慮した健康経営度調査(総合)の上位20%、かつ、ROEの直近3年間平均が0%以上であることなどの条件に合った企業から、原則1業種1社が選出 ≪最多(7回)選定≫
・ TOTO
・ 花王
・ テルモ
・ 東急
・ SCSK
・ 大和証券グループ本社
日経スマートワーク経営調査
(日本経済新聞社)
上場企業・有力企業を対象に「人材活用力」「イノベーション力」「市場開拓力」の3分野について、アンケート調査・公開データを使い企業を評価≪総合格付け 星5.0個≫
・ 伊藤忠商事
・ サントリーHD
・ 東京海上HD など
FTSE Blossom Japan Index (FTSE Russel)日本の上場企業を対象にESG調査を行いスコア化。
上場企業4100社の中でESGの取り組みが積極的で優れている企業を抽出
≪ESGスコア 4.3以上≫
・ ファーストリテイリング
・ 三井化学
・ 住友林業
・ 双日
・ 富士通
・ 芙蓉総合リース
新・ダイバーシティ経営企業100選
100選プライム
(経済産業省)
企業からの公募で選ばれる。ダイバーシティ経営企業を増やしていくことが目的で、一度選定されるとその企業は表彰企業として認定され、次回以降応募できない。
「100選プライム」は過去の表彰企業が公募できるもの
≪100選プライム≫
・ 日本ユニシス
・ 大橋運輸
なでしこ銘柄
(経済産業省・東京証券取引所)
東証上場会社の中から、 女性活躍度調査で業種ごとの上位企業と、各業種における1位企業のスコアから基準値を算出し、該当する企業を選定 ≪5年以上連続選定≫
・ 東急
・ ダイキン
・ カルビー
・ SCSK
・ 大和証券グループ本社 など

どの指標でも上位に来る「東急」「SCSK」「大和証券グループ本社」などの上位常連組があるのがわかります。
逆にそれは、サスティナビリティ経営の浸透度が企業によってまちまちであることを示しており、企業トップの意識変革と具体的な行動が求められている企業がまだまだあることを示しています。

(4) 開示情報に係るアワード

その他、日本を含むグローバルを対象とした企業の非財務情報レポートのアワードもあります。

CR Reporting Awards
(Corporate Register Ltd.)
Corporate Registerの登録ユーザー約6万人の投票による最も優れた企業の非財務情報のレポートを表彰(グローバル) ≪Best Report≫
H&M
≪Best 1st Time Report≫
ソフトバンク
≪Best Integrated Report≫
Australia Post

直近では、ソフトバンクが受賞しています。

企業はこのような指標も参考にしながらダイバーシティなどを含め自社の現在地を把握し、改善につなげていくことが非常に大切です。
改善後は、積極的な調査への協力や情報開示の強化を図っていき、ブランドイメージの向上につなげていきましょう。

3. 自治体のSDGsランキング・調査結果

次に、自治体版のSDGsの調査結果などから、日本の自治体におけるSDGsの現在地を見ていきましょう。
自治体のSDGsの取り組み状況などを分析した主な調査は、以下の通りです。

(1) SDGsに関する全国アンケート調査 (内閣府 地方創生推進事務局)

① SDGsに関する全国アンケート調査とは

SDGsに関する全国アンケート調査とは、内閣府地方創生推進事務局が毎年行っている主な業績評価指標に位置付けられている「SDGsの達成に向けた取組を行っている都道府県及び市区町村の割合60%」の達成に向け、自治体におけるSDGsに関する取組状況を把握し、今後の取組推進・普及展開に活かすための調査のことです。

② 地方創生SDGs達成に向けた取組状況 ~増加するSDGs推進自治体 39.7%(2020年度)~

2018年度にSDGsを推進していると回答した自治体はわずか4.9%でしたが、2020年度にはその割合が39.7%に増加しています。
ただ、自治体内での人的リソース・経験や専門性・予算の不足などの理由でSDGsに取り組みたくてもなかなか具体的な取り組みが出来ていない様々な障壁があることが調査結果より明らかになっています。

③ 加速する自治体のSDGs・脱炭素の取り組み ~ゼロカーボンシティの表明など~

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に加入する自治体や「SDGs未来都市」に選定される自治体も増えています。
また、脱炭素の領域では、2050年にCO2排出量実質ゼロを目指すゼロカーボンシティを表明した自治体は人口割合で9割を超えるなど、自治体はここ数年でSDGs・脱炭素を推進する方向に大きく舵を取っています。

(2) 全国市区「SDGs先進度調査」 (㈱日経リサーチ)

① 全国市区「SDGs先進度調査」とは

全国市区「SDGs先進度調査」とは、㈱日経リサーチが隔年で行っている全国の市区がSDGsの実現に向けた取り組みを、「経済」「社会」「環境」のバランスが取れた発展にどれだけつなげているかを評価する調査のことです。

② 「第2回 SDGs先進度」総合ランキング ~躍進するさいたま市~

2020年度の第2回調査では、さいたま市が総合1位となりました。
また、2位は前回1位の京都市、3位には葛飾区が入りました。

総合ランキング1~10位 ( )は前回の順位
 1( 7) さいたま市
 2( 1) 京都市
 3(14) 葛飾区
 4( 2) 北九州市
 5( 4) 豊田市
 6(13) 福岡市
 7(27) 川崎市
 8( 6) 相模原市
 9( 8) 板橋区
  10( 5) 岡山市 

なお、詳細な調査報告書は、㈱日経リサーチのホームページから購入することができます。

(3) 地域版SDGs調査 (㈱ブランド総合研究所)

① 地域版SDGs調査とは

地域版SDGs調査とは、㈱ブランド総合研究所が毎年行っている都道府県ごとに住民の幸福度や居住意欲度、悩みや地域の課題、自治体のSDGsへの取り組みの評価などを数値化した調査のことです。
SDGsの認知度のほか、居住する都道府県のSDGsの取り組みについての評価、社会や環境の持続性につながる行動、幸福度などの持続性と、それらの阻害要因である悩みや地域の課題など、全142項目の指標を調査・数値化しましたものです。

この調査の結果、居住している都道府県のSDGsへの取り組みを評価している人ほど、「幸せ」を感じる割合が高く、定住意欲度も高くなる傾向が明らかになりました。

② 住民によるSDGs評価ランキング ~2年連続 鳥取県が1位~

2021年の第3回調査では、鳥取県で2年連続1位、2位は石川県、3位は千葉県、4位は広島県、5位は三重県という結果でした。

鳥取県は、2020年4月3日に持続可能な地域づくりに向けてとっとりSDGs宣言」を行っています。
調査結果では、SDGsの17のゴールのうち、「3.すべての人に健康と福祉を」と「11.住み続けられるまちづくりを」の取り組みの評価がいずれも全国1位であり、11のゴールで5位以内となるなど、幅広くその取り組みが住民に評価されているようです。

なお、詳細な調査報告書は、㈱ブランド総合研究所のホームページから購入することができます。

4. 就活生のSDGs認知度・企業選びに与える影響度調査

次に、就活生に対するアンケート調査結果などから、就活生のSDGsに対するスタンスを見ていきましょう。
就活生のSDGs認知度・企業選びに与える影響を分析した主な調査は、以下の通りです。

別コラム「SDGsで差別化‼Z世代の優秀な新卒就活生の採用を成功させるには」にて詳細な紹介をしていますので、詳細はそちらをご覧ください。

5. 消費者のSDGs意識調査

次に、消費者に対するSDGsの意識調査結果などから、日本の消費者のSDGsに対するスタンスを見ていきましょう。

一般消費者のSDGs認知度・関心度やエシカル消費などへの姿勢などを分析した主な調査は、以下の通りです。

(1) 消費者のSDGs認知度

① SDGs認知率 ~約1年でほぼ倍増~

電通が2021年1月に行った「SDGsに関する生活者調査」によると、SDGsの認知率は54.2%で前回調査の29.1%からほぼ倍増しています。
これは、脱プラスチックバックなど環境を意識した取り組みが市民レベルで浸透してきているとともに、テレビ・雑誌などでSDGsの特集が頻繁に組まれることが大きな要因と考えられます。

(出所)電通

ただし、「内容まで含めて知っている」と回答したのは20.5%であり、言葉で聞いたことはあるものの、内容の理解までは浸透していないのが現状と言えます。

② 年代別のSDGs認知度 ~10代が1位~

電通の「SDGsに関する生活者調査」によると、10代のSDGs認知率が7割を超え、全年代で最も高い結果となりました。

(出所)電通

10代のSDGs認知率が高い理由は、最近では大学や小中学校・高等学校など授業の中でSDGsに関するテーマが取り上げられており、入試問題にもSDGsに関する問題が頻繁に出題されており、教育現場の中でごく一般的に触れられる時代になってきているからです。
この背景には、文部科学省のESD(持続可能な開発のための教育)」という施策があります。
ESDとは、これらの現代社会の問題を自らの問題として主体的に捉え、人類が将来の世代にわたり恵み豊かな生活を確保できるよう、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことで、問題の解決につながる新たな価値観や行動等の変容をもたらし、持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動のことです。

このように、SDGsの認知度・理解の深さは、「学生>企業の社員」です。

したがって、企業採用の現場においても、学生だからと軽視せず、”自分たちより理解が進んでいる”という意識を持ち、誠実に対応することが優秀な学生を採用する第一歩であると言えます。

③ SDGsの認知経路 ~テレビ・Webが主流。ただ年代により経路は異なる~

電通の「SDGsに関する生活者調査」によると、SDGsの認知経路の上位は、テレビ番組(47.3%)、情報WEB(32.0%)、新聞(24.2%)であり、テレビ番組は前回調査から急増しています。
これは、SDGsをテーマとするテレビ番組が増えてきていることも要因と言われています。

(出所)電通

ただ、”テレビ番組がSDGs認知経路”と回答しているのは、60代・70代が約60%なのに対して、10代は約20%であり、世代間の差が明らかになっています。
つまり、デジタル世代の10代にアプローチするには、やはりテレビ偏重ではダメでSNSなどのネット環境での情報発信が必要になってきていることを当調査でも示しています。

(2) 消費者の関心が高いSDGs目標

損保ジャパンが2021年7月に行ったSDGs・社会課題に関する意識調査によると、消費者が特に関心が高い項目は、「貧困問題」・「気候変動・異常気象」・「福祉・介護、高齢化社会」であることがわかりました。

(出所)損保ジャパン

消費者が最も関心が高い項目は、”日本の現状課題をそのまま反映している”と言えます。
すなわち、拡がる所得格差やコロナによる生活困窮者の増加により日本社会が貧困問題も軽視できないレベルに差し掛かっており、台風や水害などによる災害・異常気象による農作物の不作や高騰などを受けている昨今の日本の現状が調査結果に如実に反映されています。

(3) エシカル消費と消費者の購買行動の傾向

① サステナブルな購買行動 ~エシカル・エコ・ミニマル・ロングライフ・サーキュラー~

電通が行った「SDGsに関する生活者調査」の結果を分析すると、消費者は、”エシカル(倫理的)エコミニマル(最小限)ロングライフサーキュラー(循環)”などのサステナブルな意識を頭に入れながら購買活動をしていることがわかります。

(出所)電通の調査結果に一部当社が加筆

特に今回の調査では、「廃プラスチックや廃タイヤなど、従来廃棄される素材から作った商品」について前回から12.3ポイント上昇するなど、”サステナブル素材・商品”への関心が急激に高まっていることが読み取れます。

② エシカル消費とは

「エシカル消費」とは、”消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと”であり、日本では特に消費者庁が旗振り役としてその調査・推進を行っています。
2015年9月の国連総会で決められた国際的な17の目標のなかにも、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会などと併せて、「持続可能な生産・消費形態の確保」が掲げられており、「エシカル消費」は「目標12:つくる責任・つかう責任」に関連する取り組みです。

「エシカル消費」の具体例としては、”障がい者支援につながる商品””人権を考慮したフェアトレード商品”や”地産地消・被災地産品”を積極的に購入し、購入を通して消費者自らが社会課題の解決に主体的に行動することです。

(出所)消費者庁

詳細な内容は、消費者庁のホームページのアニメーション動画リーフレット・パンフレットなどをご覧ください。

③ サステナブル時代に企業に求められること

消費者が、”サステナブル”を意識して購買行動していることがわかりました。

すなわち、企業にとっては、サステナブルな購買行動のキーワードを意識したビジネスの再構築こそが、既存顧客のロイヤリティを高め、若い世代を中心とした新たな消費者の獲得につながります

逆に、消費者が重視するキーワードに合致しない企業は今後徐々に市場から淘汰されていきます。
また、その消費者意識に合致した商品がありふれてくると自社の差別化が難しくなり、自社のサービス・製品の良さをいかに消費者に認知してもらうかが競争優位を確立するカギになってきます。

したがって、”自社のサービス・商品が消費者の関心ごとのど真ん中の商品である”というメッセージを様々な媒体を通じて積極的に消費者に直接届けていくことが、他社との差別化を図り持続的な成長のためには不可欠です。

その際、差別化の武器になりうるのがMSC認証などの認証制度の活用です。
SDGsに関連する認証制度については、「他社と差別化! 攻めのSDGs経営に使える認証制度」にて詳しく紹介していますので、そちらをご覧ください。

6. SDGsのよくある質問

 お問い合わせいただくSDGsの質問のうち、まず最初に知っておきたい15のことを資料にまとめました。
 ご興味がある方は、下記ボタンからご入手ください。

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≪SDGsランキング関連ニュース≫
世界120位「女性がひどく差別される国・日本」で男より女の幸福感が高いというアイロニー(2021年4月7日)
 引用元: プレジデントオンライン
女性議員の割合、日本は166位 世界平均は倍増25%(2021年3月6日)
 引用元: 朝日新聞デジタル
SDGsへの取り組みの評価が高い企業ランキング2020【全100位・完全版】(2020年3月25日)
 引用元: ダイヤモンドオンライン

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