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SDGsで差別化‼Z世代の優秀な新卒就活生の採用を成功させるには

執筆者:小林孝嗣

公認会計士/㈱文化資本創研 代表取締役社長
国際文化政策研究教育学会 会員

㈱文化資本創研とは
サステナビリティ経営のための産学連携会社。
主な事業は、SDGs・脱炭素経営の実装支援、オープンイノベーション加速化事業、経済効果測定・データ分析。
大阪・関西万博2025への産学連携共同参画プロジェクトも展開。
京都大学含む10以上の大学・研究機関の教授・研究者と公認会計士・IRスペシャリスト・データアナリスト・プロダクトデザイナーなど実務のプロ集団が協働で企業のサステナビリティ経営の実装を支援している。
国際文化政策研究教育学会などと連携。 脱炭素経営促進ネットワーク (環境省) 支援会員

今の就活生は、デジタル・SNSに精通し環境・社会問題への関心の高いZ世代が中心となってます。
彼らの価値観・志向・行動様式などは、Z世代以前とは大きく異なります。

Z世代は、SDGsが身近にある「SDGsネイティブ」であり、優秀な学生を取り込むにはSDGsが欠かせません。
ただ、多くの企業が自社のSDGsの取り組みをうまく発信できていません。
逆にいうと、SDGsの取り組みをうまく発信すれば、他社との差別化を図れるチャンスと言えます。

本コラムでは、就活生の中心である「Z世代」の定義、その特徴、SDGsへの関心度などを紹介し、企業がSDGsを新卒採用の力にするポイントを紹介します。

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目次

  1. Z世代とは
  2. 今の就活生(Z世代)の特徴 ~SDGsへの関心が高い理由~
  3. 今の就活生(Z世代)のSDGs認知度と企業選びに与える影響
  4. SDGsを武器に優秀な就活生の採用を成功させるポイント

1. Z世代とは

(1) Z世代とは ~今まさに就活生世代(11歳~25歳)~

Z世代とは、一般的に1996年から2010年の間に生まれた世代(諸説あり)と定義されており、2021年現在の年齢が11歳~25歳の若者で今企業が新卒採用する大卒就活生のほとんどがZ世代に当たります。
全人口に占めるZ世代以降の人口の割合(2020年)は、アメリカでは32%、日本では22%です。

Z世代は、デジタルが当たり前の時代に生まれてきたことから「デジタルネイティブ」「SNSネイティブ」と呼ばれます。

(2) 「SDGsネイティブ」なZ世代

多感な子ども時代に米同時テロや東日本大震災といった衝撃的な出来事、地球温暖化による異常気象や地球規模の環境問題を見てきた世代で、他の世代に比べて環境や社会課題に対する問題意識が高い「SDGsネイティブ」とも言われます。

2. 今の就活生(Z世代)の特徴 ~SDGsへの関心が高い理由~

(1)Z世代の特徴 ~デジタルネイティブ、堅実、環境志向~

Z世代の今の就活生の主な特徴は、以下の通りです。

Z世代は、 Instagram・TikTokなどのSNS中心で情報収集・発信を行い、学生の部屋にはテレビがないというのが現状です。また、文字よりは動画中心の情報収集・発信を得意とします。

リーマンショック後のリストラや企業の不祥事などを見てきた世代で、終身雇用を期待する学生は減少傾向にあり、就職は将来の起業のためと割り切る学生が増えています。

お金やキャリアも堅実志向にあり、ライブ・旅行などの体験である「コト」消費を大切にする、車・服に限らずなんでも「シェア」が当たり前の世代です。

(2)Z世代がSDGsなど社会課題への関心が高い理由

① Z世代の就活生のSDGs認知度 ~認知度は経営者を上回る~

「大人よりもZ世代のほうがSDGsの知識や理解が深い」 です。
学情の就活生に対するアンケート調査によると、就活生のSDGs認知度はなんと95.9%と1位でした。
20代社会人よりも20.4ポイント高い結果であり、他の調査でも、経営者のSDGs認知度を上回っています

正直、大人の一人として非常に恥ずかしい結果だと感じました。
企業は、「自分たちよりも就活生の方が認知度も意識も高い」という意識を持ち、学生を甘く見ないこと
それが採用の失敗を防ぐ大切な心構えの一つであると言えます。

② Z世代がSDGsへの関心が高い理由

Z世代が社会課題に関心が高いのには、彼らの生まれ育った時代背景が大きく影響しています。

彼らは幼いころから、地球温暖化による異常気象や自然災害といった地球規模の環境問題や、東日本大震災などエネルギーの在り方を問われるような出来事を目の当たりし、また、環境活動家 グレータ・エルンマン・トゥーンベリ(18歳(2021年))さんの気候変動問題に対する活動を同世代としてみていることも影響しています。

学校教育の中でもSDGsなど社会課題について当たり前に扱われてきました。
中学受験では、SDGsに関連した問題が数多く出題され、高校の授業では、SDGsをテーマにディスカッションをしたり、受験で小論文のテーマとして出たりしています。大学では、環境問題やジェンダーについて学ぶ専攻や講義が設けられているなど、これまでの世代よりも教育の中での接点が非常に多いことがわかります。

SDGs関連では、「気候変動」「人口減少」「地方創生」の3分野に関心を寄せる学生が多いと言われていますが、彼らからはそのようなキーワードで検索しても求めるような情報は出てこなかったとの声が上がっています。

逆をいえば、自社のSDGsの取り組みを彼らの好む媒体でしっかり伝えることができれば、「エシカル就活」をする就活生を取り込むチャンスです。

3. 今の就活生(Z世代) のSDGs認知度と企業選びに与える影響

(1) 就活生のSDGs認知度 ~消費行動も左右するSDGs。属性によって異なる関心ごと~

就活生のSDGs認知度はなんと95.9%1位です。
広島大学が調査した「若者世代は本当にSDGs世代か?」によると、「商品サービスを選ぶ時に、企業のSDGsの取り組みを気にする」と答えた若者世代(18~30歳)は、21.8%と上の世代の約2倍もSDGsが購買行動に与えていることが示されています。

学生は、SDGsの17の目標すべてに関心があるわけでありません。
自分に身近なテーマほど強い関心を示す一方で、自分との接点が見えずらいテーマへの関心は低い傾向にあります。また、性別・理系文系・海外経験の有無などの属性によって、関心のあるSDGsの17の目標が変わります。
例えば、近年の自然災害の頻発により「気候変動」への関心が最も高く、また、男性より女性の方が「ジェンダー平等の実現」への関心が高いという調査結果があります。


SDGsは 就活生の身近な関心にアプローチする絶好のコミュニケーションツール」 です。
企業が採用したい学生像を絞り、学生像にあったSDGs関心事にアプローチすることは採用を成功させるカギです。

(2) 就活生の企業選びのポイント

① 就活生が就職先を選ぶ判断基準 ~社会貢献度が第1位~

今の就活生は、就職先を「自らの時間を長期的に投資するに値する企業」かという視点で見ています。
就活生は、”SDGsに消極的な企業は、今後の消費の中心を担う社会・環境意識の高いミレニアム世代・Z世代からの信頼を失い、市場から徐々に排除される成長性の低い企業”という考えを持っています。
したがって、SDGs・社会貢献度は企業の長期的成長を占う一つのメルクマールなのです。

日経HR編集部が発行した『未来を変える会社(2022-2023年版)』では、なんと最初の30ページでSDGの特集を組み、SDGsと会社選びの関係・SDGsに関わる様々なランキングの紹介、面接の際には「会社のパーパス(存在意義)を質問しろ」との提案などがなされています。
なので、就活生は否が応でもSDGsを就活の羅針盤として無意識に意識するようになってきています。

また、株式会社ディスコの「就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2020年8月調査)」によると、企業の社会貢献度が志望度に影響したという学生は65%を超えており、 就職先企業に決めた理由では「社会貢献度が高いこと」が1位(30.0%)であり、企業の社会貢献度を判断する要素として「SDGsなどの取り組み」を上げた学生は26.1%と年々その割合は増加しています。

出所:就活生の企業選びとSDGsに関する調査(キャリタス就活)
出所:就活生の企業選びとSDGsに関する調査(キャリタス就活)

また、別の調査では、就活生より以下のような声が寄せられています。

  •  「CSRは掛け声だけの企業もあった。中身を伴う必要があると思う」
  •  「「SDGs」に取り組んでるかどうかではなく、実際に取り組む内容が重要だと思う」

SDGsネイティブの就活生に関心を持ってもらうためには、単にSDGsの目標に関連した取り組みを並べるのではなく、”製品・サービスの提供などを通じて具体的にどんな社会課題の解決に貢献しているのか”、そのプロセスに彼らが”どのように参画できるのか”を丁寧に説明することが重要です。

”取り組みの本気度・具体的な内容”で企業選びをされているという企業の意識が重要なのです。

(補足) 丸井グループのサスティナビリティ経営(共創経営)と人材採用

丸井グループは、再生可能エネルギーの導入など脱炭素をリードする会社です。
脱炭素対応には、一般的にはコスト増を伴います。

しかし、丸井グループは、”脱炭素対応のコスト増は既に十分に回収できている”と話しています。
一般的に、人の採用が難しく離職率が高い小売業ですが、脱炭素に限らず様々なサスティナビリティに関わる取り組みをすることで、人材採用が容易になり離職率が低下したようです。

② 就活生の情報収集方法 ~企業の就活サイト・パンフレットが1位~

「就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2020年8月調査)」によると、 就活生の社会貢献度の調べる手段は、企業の採用HPやパンフレットが1位(72.3%)でした。

出所:就活生の企業選びとSDGsに関する調査(キャリタス就活)

したがって、就活生が一番判断材料として利用する会社の採用HPやパンフレットの”充実”させ、”積極的なSDGs情報開示による就活生との対話”が、他社と差別化のための一つのカギとなってきます。

4. SDGsを武器に優秀な就活生の採用を成功させるポイント

「SDGsネイティブ」である就活生は、日ごろからSDGsに関心が高く、企業が思っている以上に非常に感度が高いことは忘れてはいけません。
実態が伴わないのにSDGsに取り組んでいるように見せかける『SDGsウォッシュ』は簡単に見抜かれます

人事部がSDGsの本質を理解し言語化できなければ、 「SDGsネイティブ」 の人財確保は近い将来困難になります。

就活生が就活サイトを見てがっかりするよくあるパターンは、以下の通りです。

  •  SDGsの記載がない。あっても、具体的な取り組みの記載がない
  •  本業での社会貢献が明確でない。慈善活動のみで本気かどうかわからない
  •  現状の活動のみであり、将来的に積極的に取り組むSDGsの目標及び目標達成のためのロードマップがみえない
  •  目標年・数値が明確でない
  •  自分たちが社会貢献に関われるかイメージできない
  •  マイナス部分を隠してプラス面だけのいいとこ取り(例:植樹しているが、石炭火力発電へ投資)

優秀な就活生の心にアプローチするには、「SDGsの本気度の見える化」「積極的な情報発信の強化」の両面での取り組みが必要です。

(1) SDGsを本業に組み込む ~SDGsをCSVの羅針盤として使う~

SDGsは社会・産業の将来の方向性を列挙した非常に有益なものです。
「ビジネスリスク・チャンスを分析する最良のツール」であり、「就活生などとの最強のコミュニケーションツール」なのです。

優秀な学生にとって、SDGs・社会貢献活動は企業の長期成長を占う手段の一つです。
SDGsをCSRや慈善活動の延長線上と考えず、会社の本業に組み込む(CSV、Creating Shared Valueの略)ことが企業の成長を考える上で非常に重要であり、最終的に採用活動の成功につながります。

まず、企業成長のためにも、人事部だけでなく経営企画部・広報部・事業戦略部などとも協力しながら、”企業の成長に貢献するSDGsの項目はないか”じっくり考えてみましょう。

(2) SDGsの目標・実績の数値化 ~バックキャスティングによる目標設定~

SDGsが進んでいる企業の採用HPでも、”現状の延長線上の取り組み”のみの記載だったり、”具体的な目標年・数値がない”のがほとんどです。

これは、逆に他社との差別化を図るチャンスです。

就活生は、数十・数百社の採用HPを見ています。
SDGsの実績、目標とする項目・その理由・目標年・数値などあらゆるものの数値化を図り情報の透明性を高めることが、SDGsの取り組みを就活生に的確に伝える唯一の方法です。

(3) 新卒採用媒体のSDGsの充実 ~採用HP・パンフレット~

Z世代の就活生の社会貢献度の調べる手段は、企業の採用HPやパンフレットが1位(72.3%) です。
採用HPやパンフレットの強化は費用対効果が高いです。

上記(1)(2)を通じて出されたコンテンツをベースに企業の採用HPやパンフレットを見直します。
その際、以下のような点を意識しながらブラッシュアップするとよいでしょう。

  •  作成者がSDGsの本質・就活生のニーズ(ターゲットとする学生の重視するSDGsの項目など)を熟知していること
  •  SDGsの目標数値・目標年度を明確に伝える
  •  本業での取り組みにフォーカスする
  •  就活生が将来、事業を通じて社会貢献ができるイメージが伝わる
  •  就活生が目に届くところに置く(デジタルだけでなく、アナログでも)

現状の体制等で上記すべて内容を効果的に採用HPやパンフレットに織り込むのは難しいかもしれません。
場合によっては、SDGsに詳しい広報・マーケティングの外部専門家の力を借りてSDGsを軸にブラッシュアップされることもおすすめします。

(4) 就活生(Z世代)が好む媒体での情報発信

① SDGs情報の発信 ~SNS(Instagram etc.)・YouTube~

Z世代の一番の情報収集方法は、InstagramなどのSNSであり、文章より動画・イラストを好みます。
したがって、InstagramなどのSNSYouTube などの様々な媒体でのコミュニケーションの大切さはご存知でしょう。

一つご紹介したいのは、トヨタ自動車の「トヨタイムズ」です。

テレビCMでご覧になった方も多いでしょう。
俳優 香川照之が編集長となって様々なトヨタに関わるストーリーに迫る動画です。

株主総会の様子やトヨタ工場跡地を活用したスマートシティ「ウーブンシティ」に至るストーリー、水素エンジン自動車の24時間耐久レース、所属選手の東京オリンピックに関わるストーリーなど、様々な企業ブランドに関わる情報を動画で作成し、テレビのCMだけでなく、YouTubeで流しています。

ブランド・ストーリーに関わる動画をテレビCMだけでなく、HP、YouTubeなど様々な媒体で配信する。
このようなブランド構築の方法は、ますます強まってくると思います。

② SDGs就活オンラインイベントによる就活生と直接対話

最近は、SDGs就活オンラインイベントが増え、SDGsを武器に就活生に直接アピールする機会も増えています。
例えば、株式会社グレイスの運営する「エコリク新卒」では、「SDGs就活LIVE」「SDGs就活フォーラム」などをしています。
このような媒体も利用しながら、SDGsに関心のある優秀な就活生に直接自社の取り組みをアピールし、彼らと直接対話する機会を増やすことも考えていきましょう。

いかがでしたか?

表面的なSDGsのPRでは、Z世代の心はつかめません
企業(特に人事部)がしっかりSDGsの本質を理解し、言語化・数値化して学生に伝えること。
情報をHPだけでなく、YouTubeなどZ世代の基本ツールでアプローチすること。
両面の強化して、ようやく感度の高いZ世代の就活生の心をつかめるのです。

SDGsの目標年である2030年にはZ世代以下が人口の約30%を占めます。
「消費者の中心」となり、「社員の中核」を担うZ世代をうまく取り込み企業の持続的成長を考えてみましょう。

当社は、公認会計士・CSRスペシャリストなどの専門家集団と大学教授などの学術研究者陣との協働による産学連携により、SDGsの研修・浸透、SDGs経営への移行を支援しています。
15分間無料相談などもしていますので、SDGs ・就活生へのPRに関してお困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。

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小林孝嗣

公認会計士/㈱文化資本創研 代表取締役社長
国際文化政策研究教育学会 会員
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