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販売停止!? 侮ると怖いSDGsウォッシュの事例とリスク回避策

執筆者:小林孝嗣

公認会計士/㈱文化資本創研 代表取締役社長
国際文化政策研究教育学会 会員

㈱文化資本創研とは
サステナビリティ経営のための産学連携会社。
主な事業は、SDGs・脱炭素経営の実装支援、オープンイノベーション加速化事業、経済効果測定・データ分析。
大阪・関西万博2025への産学連携共同参画プロジェクトも展開。
京都大学含む10以上の大学・研究機関の教授・研究者と公認会計士・IRスペシャリスト・データアナリスト・プロダクトデザイナーなど実務のプロ集団が協働で企業のサステナビリティ経営の実装を支援している。
国際文化政策研究教育学会などと連携。 脱炭素経営促進ネットワーク (環境省) 支援会員

SDGsウォッシュという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

SDGsが浸透し始めている現在において、SDGsを取り組んでいるだけでは評価されず、その”本気度”や”深度”で評価される時代に移行しつつあります。
そのような中で、「SDGsウォッシュ」 と評価を受け、不買行動などで大打撃を受けたケースが出てきています。

そこで、本コラムでは「SDGsウォッシュ」とは何か、その事例、回避策などを紹介します。

初回投稿日 : 2021年10月2日
最終更新日 : 2021年11月6日

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目次

  1. SDGsウォッシュとは
  2. SDGsウォッシュのインパクト・弊害
  3. SDGsウォッシュの事例
  4. SDGsウォッシュの回避策
  5. そもそもSDGsとは

1. SDGsウォッシュとは

(1) SDGsウォッシュとは

SDGsウォッシュとは、”実態が伴っていないのにSDGsに取り組んでいるように見せかけること”をいいます。
「ウォッシュ(wash)」には、”うわべだけ表面だけ塗って中身をごまかす体裁を取りつくろう”といった意味があります。

(2) SDGsウォッシュの由来 ~グリーンウォッシュとは~

SDGsウォッシュは、”ごまかしや粉飾”を意味する「ホワイトウォッシュ(whitewash)」と「SDGs」を組み合わせた造語で、「グリーンウォッシュ(green wash)」が由来であるといわれています。

「グリーンウォッシュ」とは、1980年代に”環境問題に本気で取り組んでいないのに、環境配慮型の商品・サービスかのように見せかけごまかす”企業への批判から生まれた言葉です。
具体的な例としては、「根拠なく”エコ・省エネ”といったワードを使った商品PR」などです。

(3) 他者がジャッジするSDGsウォッシュ

SDGsウォッシュという言葉が出てきたということは、”SDGsのステージが上がったこと”、すなわち、”企業の取り組みの中身をしっかり吟味し評価しよう”という時代になってきたことを意味しています。

「SDGsウォッシュ」とジャッジするのは、企業自身ではなく他者です。
「SDGsウォッシュ」と評価を受けた事例も、そのほとんどが「嘘」・「隠蔽」があるわけではありません。
”他者からみてどのように映るか”であるという視点を忘れてはなりません。

(4) 新たに何も取り組んでいない場合はSDGsウォッシュ!?

新たに何かに取り組むことなく、過去から行っていた事業・活動に17の目標のアイコンをつけて「私たちはSDGsに取り組んでいます」とアピールし満足している企業が非常に多いです。

2030年のSDGs目標の達成に向け、”将来に向かって企業活動を進化・改善し、社会に追加的なプラスのインパクトを与えること”が問われているのに、”過去”・”現状”の評価だけでは不十分です。
場合によっては、SDGsウォッシュだとみなされても仕方ありません

望まれるのは、2030年のSDGs目標の達成に向けて、企業自ら2030年の定量・定性的な目標をセッティングしバックキャスティングでロードマップを策定し、目標達成に向け、企業活動の進化を図ることです。
このプロセスこそが、企業の環境対応力を高め、企業自身の持続的な成長の源泉につながります。

2. SDGsウォッシュのインパクト・弊害
~不買行動・販売停止・投資家などからの信用失墜~

「SDGsウォッシュ」とみなされると、ステークホルダーからの信用失墜により企業活動の継続に支障がでます。

(1) 製品の販売停止・消費者の不買行動

SDGsウォッシュとみなされると、企業自身やその商品・サービスへの信用が損なわれて、企業イメージの低下・不買運動などを通じて企業活動全体が大きなダメージを受けます。

例えば、半強制労働・児童労働を生んでいる責任が企業にある評価された場合、各国政府の販売停止命令や消費者個人の不買運動などを通じて、経済基盤が著しく毀損します。

(2) 投資家・金融機関からの失望による株価低下・融資の困難化

顧客だけでなく、投融資元である投資家や金融機関の信用も失います。
主要な投資家はESG投資が主流になってきており、ESG投資銘柄からの除外などを通じて株価が低下します。

また、金融機関はサステナブル融資(ESG/SDGs融資)を推進し始めています。
金融機関からの評価が下がることにより、金利・融資期間など融資の条件が厳しくなったり、場合によっては金融機関の融資基準を満たさず融資の停止を受ける可能性すらあります。

3. SDGsウォッシュの事例

(1) SDGsウォッシュになりやすい傾向

OECDは、「”SDGsウォッシュ”とは、いくつかのSDGs目標に貢献しながら、その他の目標への負の影響をないがしろにしていること」と評し、具体的な事例も示しています。

(具体例)
自動車会社が電気自動車の販売により気候変動対策に貢献しているにもかかわらず、コンゴでのコバルト採掘に5歳の子供を従事させていること

「SDGsウォッシュ」の評価主体は他者であり、企業の意図の有無に関係なく「SDGsウォッシュ」と評価される可能性があります。

なお、「SDGsウォッシュ」とみなされる事例には、以下のような傾向があります。

  • 根拠がない、情報源が不明な表現
  • 事実よりも誇張した表現
  • あいまいな表現
  • 事実と関連性の低いビジュアル
  • SDGsの認識不足や不十分な取り組み
  • 公表している取り組みと矛盾する事業・活動
  • 取り組み自身は本当だが、負のインパクトを与える事業・活動の存在

(2) SDGsウォッシュにつながる主な事例

次に、「SDGsウォッシュ」につながる主な事例を6つ見てみましょう。

「取り組み・開示が不十分」と評価されたケースや「取り組み内容と実際の事業の矛盾」を指摘されるケース、「取り組み自体は事実だが、一方でマイナス面が多い」ケースなどがあげられます。

では、一つずつ事例の概要とその背景などをみていきましょう。

製造業 T社(日本) ~外国人技能実習生に係る人権侵害~

a) 事例の概要

2016年、8人のカンボジア人技能実習生が受け入れ企業T社などから強制帰国させられ人権侵害を受けたとして、帰国して4年後(2020年)、T社の元従業員から相談を受けた支援団体が受け入れ企業・管理団体・送り出し機関へ謝罪や補償を求めました。
その結果、管理団体と送り出し機関は本人の意に反してパスポートを取り上げ強制帰国をさせたことを認めたとされています。

受け入れ企業T社は、大手コーヒーチェーンS社とコンビニチェーンF社に食品を卸すサプライヤーです。
8人の支援者たちは受け入れ企業や管理団体だけでなく、 S社とF社に対しても「サプライチェーンの中で起きた人権侵害は、取引先の企業も責任を負うのが国際的な常識」だとし、人権ポリシーがあるにもかかわらず十分に対処していないとして”サプライチェーンとしての社会的責任”を追及しています。

b) 背景 ~サプライチェーンまで問われる企業の社会的責任~

2011年に国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」の一般原則の中で、人権問題は”その規模、業種、拠点、所有形態及び組織構成に関わらずすべての企業に適用される”とされています。

また、この原則では、人権問題に対する企業の社会的責任が定義されており、その範囲は”作為・不作為に関わらず、サプライチェーン(取引先企業)まで及ぶ”とされ、”助長することの回避”の責任も謳われています。

また、S社・F社のように、 「ビジネスと人権に関する指導原則」 などをベースにしたサプライチェーンベースでの人権ポリシーを掲げている企業もあります。

故意・過失が立証されていない取引先企業に対していきなり責任を問うことの是非はともかく、SDGsウォッシュリスクを低減するには、サプライヤーにおける人権問題(外国人技能実習生問題含む)に対しても関心をもち極力関与する姿勢が不可欠かと思います。

金融機関 M社・M社(日本) ~石炭火力発電中止に係る株主提案~

a) 事例の概要

大手金融機関M社は、カーボンニュートラルを宣言しながら、一方で石炭火力発電の新規建設に対して出資や融資を継続していることは問題だと環境NPOが評価しました。

環境NPOは、”パリ協定の目標に沿った計画の開示”を求める株主提案をし、株主提案は34.5%で否決されたものの、議決権行使助言会社大手2社がこの提案への賛成を推奨するなど金融界に大きな衝撃を与えました。

その結果、M社は”石炭火力発電の新規の建設・既存の拡張に係る融資はしない”方針を表明し、また、”2040年までに石炭火力発電向け融資ゼロ”にする目標も掲げています。
また、もう一つの大手金融機関M社も同じく環境NPOからの株主提案を受け、概ね同様の目標を設定しています。

b) 背景 ~融資・出資先はサプライチェーンの範囲~

脱炭素において、金融機関における融資・出資先はサプライチェーンの範囲(SBT Scope3であるため、融資・出資先に対する積極的な関与が求められます。
特に、石炭火力発電はGHG排出量が多いため、2021年11月に行われたCOP26でもメインの議題となりました。

このような株主提案は、業界のリーディング・カンパニーがまず対象になり、それが拡がっていく傾向にあります。
同様の指摘をされている金融機関もあり、来年以降、同様の提案が他の金融機関になされることは間違いないと言えます。

詳しくは、別コラム「揺れる株主総会 待ったなしの脱炭素対応」をご覧ください。

食料品 N社(スイス)~パーム油の森林破壊等に対する不買行動~

a) 事例の概要

N社はサスティナビリティに積極的に取り組んでいる企業ですが、2010年、チョコレート製品に使用されるパーム油の調達が熱帯雨林を破壊しオラウータンの生息地が危機的状況になったとして、世界中の消費者からクレームが殺到し、N社商品の不買運動に発展しました。

そのため、N社は森林破壊に寄与するパーム油サプライヤーからの調達を中止し、熱帯雨林を破壊しない持続可能なパーム油の調達開始を発表しました。

b) 背景 ~パーム油の複雑なサプライチェーン~

植物油であるアブラヤシから取れるパーム油は、マーガリンやチョコレート、カップラーメンの揚げ油など食用だけでなく、洗剤・化粧品などにも使われています。

パーム油の生産・製造にはSDGs上の課題があり、アブラヤシ農園の開発は熱帯雨林の伐採を伴い、また農園や工場には児童労働・半強制労働・長時間労働などの労働・人権上の問題が指摘されています。

そのため、農園、搾油・精製・加工工場、そして製品へと至るまでのサプライチェーン全体での対応が求められますが、サプライチェーンには多数の小規模農家を含むことが多く、全てのサプライチェーンを把握・追跡することは至難の業です。

その後、N社は、2018年9月にパーム油生産での森林破壊ゼロを確保するため衛星を用いた監視アクションを開始し、2021年6月に、2022年までにパーム油、砂糖などのサプライチェーンで森林破壊を撲滅すると発表しています。

c) 国際認証制度の確立

そのような中で、世界自然保護基金(WWF:World Wide Fund for Nature)を始めとする関係団体が中心となり、認証の基準を定める国際的な民間非営利組織「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」が2004年に設立され、現状RSPO認証油がパーム油生産量の2割程度を占めるに至ってます。
なお、本事例のN社も現在はRSPOのメンバーとしてその活動の中心的役割を果たしています。

RSPOの詳細は、別コラム「他社と差別化! 攻めのSDGs経営に使える認証制度」をご覧ください。

④ アパレル N社(米国)~児童労働問題に起因した不買行動~

a) 事例の概要

1996年6月発行の米国の雑誌”LIFE”に、パキスタンでサッカーボールを縫製する子どもの写真が載せられ、児童労働問題として取り上げられました。

調査報告書によれば、N社のパキスタンの下請け会社で、5~14歳までの7千人を超える子供が朝から晩まで1日10~11時間就労し、1日約3ドルの不当に安い賃金で働かされていたとあります。
また、地元の人権活動家の証言によれば、子どもたちは親の借金返済のために働いており、教育を受けることのできない半強制労働下にあったようです。

当初、N社は「契約工場の問題で自社に責任はない」としていましたが、その姿勢に批判が広がりN社商品の不買運動に発展しました。
その結果、売上が激減し創業以来初めての前年比売上がマイナスになり、N社の失った売上は5年間で1.3兆円にのぼると言われています。

b) 背景 ~お手本となる行動が求められるリーディング・カンパニー~

N社に限らず、欧米・日本のほぼすべてのアパレルメーカー・スポーツ用品大手は、賃金水準が低く環境基準や安全衛生基準が厳格ではない国々の下請企業に自社製品の製造を委託しています。

では、なぜ、N社は人権団体のターゲットになったのでしょうか。

それは、N社が業界のリーディング・カンパニーだからです。
つまり、市場シェアだけでなく・イノベーションや新製品開発でも業界のリーダーであるN社が問題に対する具体的な解決策を示し同業他社のお手本をつくることで、業界全体での問題解決が早まるからです。

その後、N社は、米国のアパレル小売業の最大手GAPや世界銀行などともにNGOを設立して東南アジア途上国における労働条件および労働環境の改善に取り組みました。
また、N社は主にリサイクル素材を原料とした「サステナブル素材」の商品を多数販売しており、カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーでもリーディング・カンパニーとしての役割を果たしています。

⑤ アパレル F社(日本) ~下請け企業の過酷な労働環境と人権問題~

a) 事例の概要

F社は、2014年のCSRレポートの中で、「提携企業とのパートナーシップの強化」や「貧困問題・雇用の拡大に務める」など労働者を支援することを掲げています。
しかし、F社は、2015年中国の下請け工場の労働者の過酷労働、低賃金労働・劣悪な労働環境が香港のNGOにより報告されました。
また、同年、カンボジアの下請け工場でも長時間労働や低賃金などの劣悪な労働環境問題が報告されています。

2020年、新疆ウイグル自治区で少数民族が「綿摘み」などの強制労働に従事させられているなどと報道された際、F社社長が決算記者会見で「政治問題なのでノーコメント」とだけ述べ、人権問題について明言を避けました。

その後、大きな不買運動には発展しませんでしたが、フランスの司法当局が同社傘下のF社仏法人への捜査を行ったり、強制労働をめぐる輸入禁止措置に違反したとして米税関・国境警備局(CBP)がF社製品をロサンゼルス港での差し止めなどが起きました。

F社は、ホームページで”調査の結果、関連する取引はなかった”と公表しているが、新疆産綿を使用しない方針を即座に表明した競合H社に比較して曖昧な初動であったこともこのような結果になった一因と考えられます。

b) 背景 ~低価格を実現するファストファッションと初動対応~

特にファストファッションは短納期、かつ、低価格が求められるため、このような労働問題を助長してしまう傾向にあると言えます。
したがって、消費者自身も低価格で喜ぶのではなく、フェアトレードも意識した賢い消費行動が求められています。

また、F社の初動対応は諸外国の期待に応えるものではありませんでした。
F社の中国市場への依存度が大きな要因ですが、当初から想定できるリスクが顕在化した際にどのような初動対応を取るか、徹底的なシミュレーションを行うことが意図せざるSDGsウォッシュ(=企業イメージの低下)を防ぐ上で重要であると考えさせられた事例です。

旅行会社 H社(日本) ~バイオマス発電所(パーム油)の操業停止の要請~

a) 事例の概要

2021年1月、H社の関連子会社は宮城県でパーム油を燃料としたバイオマス発電所を操業開始し、使用するパーム油は 「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)の認証を受けたパーム油を調達する方針を掲げています。

これに対し、複数の環境NGOなどは、「RSPO 認証油でも、耕作可能な農地に限界がある以上、エネルギー用途に大量のパーム油を使うことそのものが問題」であると指摘し、世界各国から集めた20万筆以上の反対署名を集め、本事業の中止を求めています。
H社は、エコツアーなどを推進し地球環境保全を謳う反面、このような課題に十分に対応していないとしてSDGsウォッシュと評価された事例です。

b) 背景 ~食料と競合するパーム油~

日本では、RSPO認証などがある森林や泥炭地等からの転用がない土地で栽培された原料由来のパーム油を含むバイオ燃料は禁止されていません
一般的に植物由来のバイオマスは「カーボンニュートラル」と言われています。
これは、生育時にCO2を吸収・固定するので、燃焼で排出されるCO2を相殺して排出量をゼロとみなす考え方です。

しかし、ライフサイクル全体でみると、海外の生産地から日本への輸送などで多くの温室効果ガス(以下、GHG)が排出されます。
公益財団法人 自然エネルギー財団によると、欧州委員会の委託により行われた最新の調査では、パーム油の燃料消費からのGHG排出量は炭素のGHG排出量を上回るとされており、欧州連合(EU)は、2030年までにパーム油由来のバイオ燃料の使用を段階的に禁止する方針を掲げています。
また、資源エネルギー庁の会合などでも、”パーム油は様々な食料として利用されているため、食料との奪い合いになると飢餓を無くすというSDGsの目標に反し国際的な批判を浴びるのではないか”との懸念が上がっています。

(3) 6つの事例の主な共通点と企業が気を付けたい教訓

上記事例の主な共通点と企業が気を付けたい教訓は、以下の通りです。

  • 業界のリーディング・カンパニーがまず対象になる。
  • 本社管理部から感知しずらいサプライヤー企業・海外等で起きやすい。
  • 人権・気候変動関連が大きな問題になりやすい。

このような教訓を頭にいれながら、リスクの高いエリアがないか自己点検していきましょう。

4. SDGsウォッシュの回避策

「SDGsウォッシュ」のリスクを完全に除去することはほぼ困難です。
ただし、しっかり理解し対応すればリスクを相当程度軽減することが可能です。

(1) 広告宣伝など情報発信時の注意ポイント

電通が2018年6月に発行したSDGsコミュニケ―ションガイドの中で4つのポイントが示されています。

このガイドラインも参考にしながら、「SDGsウォッシュ」の原因となりうる火種がないか自己点検してみましょう。

(2) SDGsウォッシュの予防策と危機管理対応

そのほかにも、以下のような視点でSDGsの取り組みを強化することにより、「SDGsウォッシュ」と評価されるリスクを未然に軽減することが望まれます。

① 本質的なSDGsの社員教育 ~すべての社員の理解が不可欠なSDGsウォッシュ対策~

なんといっても、「SDGsウォッシュ」を防止するためには、社員のSDGsに対する深い理解がかかせません
社員教育こそが回避策の一丁目一番地といえます。

CSR部門や広報部だけでなく、調達部・製造部・アフターケアサービスなどバリューチェーン全ての部門のSDGs教育が重要になります。
一般的に、本社管理部が把握が難しいエリアでSDGsウォッシュは起こりやすいことを忘れてはいけません。

上記事例のように、自社だけでなくサプライチェーン全体での責任を問われることが多く、調達部・製造部も含めたあらゆる部門がSDGsで陥ってはいけないリスクポイントを熟知している必要があります。
問題の種を未然に紡ぐには全員の理解が必要なのです。

研修の内容は、一般的に行われている17つの目標のカードゲーム研修のような短絡的な研修は全く意味がありません
社内にSDGsの本質を説明できる人材が不足している場合、しっかりとしたバックラウンドがありSDGs経営の実装まで支援してくれる外部講師の招聘を考えてみましょう。

② サプライヤーに対するモニタリングの強化

SDGsウォッシュは、本社管理部から遠い社外のサプライヤー、それも海外(アフリカ・東南アジアの発展途上国)の下請け企業で起きるケースが多いです。

サプライチェーンベースでの環境・人権ポリシーを掲げている企業も多いですが、リスクが高い地域・事象を分析・特定し、定期的にサプライヤーに報告を求めたり、必要に応じて現地監査を実施することも必要です。

③ 環境・社会課題解決型への事業構造の変革 ~SDG Compassの活用~

自社の短期的な利益追求を起点とする考え方ではなく、”社会課題の解決を起点”に企業の存在意義や事業を考えていく「アウトサイド・イン・アプローチ」へと企業体質を変革していくことも必要です。
社会課題の解決を視点とした事業運営に変革できると、おのずとSDGsウォッシュを回避することができるでしょう。

その際、SDGs経営の実装のためにすべきことを5つのステップでまとめたSDGsの企業行動指針である「SDG Compass」も参考にしながら、本格的なSDGs経営の導入を図るとよいでしょう。

④ 危機管理対応の強化

SDGsウォッシュは、いつでもどんな企業でも起こりえます。
上記アパレルF社の事例のように、初動対応の不十分さがその後の波紋を大きくさせたケースもあります。

”常にSDGsウォッシュとみなされる可能性はある”という前提のもと危機管理対応を強化しておくことが、顕在化したあとのダメージを軽減することになります。
具体的には、危機管理対応マニュアルの整備やリスクが顕在したと想定した定期的なシミュレーションなどです。

⑤ 認証制度の活用

自社のサービス・製品がSDGsに合致していると他者に認知してもらう客観的手法としては、認証制度の活用も考えられます。
認証制度は「他社と差別化! 攻めのSDGs経営に使える認証制度」で詳細を紹介していますので、そちらをご覧ください。

5. そもそもSDGsとは

(1) SDGsとは

「SDGs」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界の国連全加盟国によって採択された国際社会共通の目標です。

このサミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
この文書の中核を成す「持続可能な開発目標」をSDGsと呼んでいます。

知っておきたいSDGsの主な特徴は、以下の通りです。

  • 国連加盟国全193ヵ国が合意した目標
  • 発展途上国だけでなく、先進国も含めたすべての国に行動を求める世界全体の共通目標
  • すなわち、世界の共通言語であり、地域・世代を超えて対話できるコミュニケーション・ツール           
  • 目標年(2030年)具体的な数値も示した目標17の目標と169のターゲット)がある
  • 目標達成に法的義務はなく、取り組むか否か・その程度は各主体の判断に委ねられている
  • 国・自治体だけではなく、企業・その他の団体・個人のあらゆる主体が取り組むことが期待される
  • 「経済」、「社会」、「環境」の3つに関わる目標があり同時両立による同時達成を目指す
  • 企業には、慈善活動・ボランティアだけでなく、本業の中で取り組むことが期待される

(2) SDGsの「17の目標」と「169のターゲット」とは

SDGsは「17の目標」と17の目標をより具体化した「169のターゲット」で構成されています。

(3) SDGsのよくある質問

お問い合わせいただくSDGsの質問のうち、まず最初に知っておきたい15のことを資料にまとめました。
ご興味がある方は、下記ボタンからご入手ください。

いかがでしたか?

「SDGsウォッシュ」を防ぐには、何よりもすべての社員のSDGsに対する正しい理解が必要です。
SDGsの”本気度”・”深度”が求められる時代に移ったという認識を持ち、SDGsの活動のレベルを向上させ、その上で「SDGsウォッシュ」のリスク回避の対策を講ずる。
そのような地道な取り組みこそが、不用意かつ意図せざる「SDGsウォッシュ」から企業を守る手段となります。

当社は、公認会計士・CSRスペシャリストなどの専門家集団と大学教授などの学術研究者陣との協働による産学連携により、SDGsの研修・浸透、SDGs経営への移行を支援しています。
15分間無料相談などもしていますので、SDGsに関してお困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。

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