コラム

  • コラム

フェアトレードとは!? 事例や認証制度も紹介

執筆者:小林孝嗣

公認会計士/㈱文化資本創研 代表取締役社長
国際文化政策研究教育学会 会員

㈱文化資本創研とは
サステナビリティ経営のための産学連携会社。
主な事業は、SDGs・脱炭素経営の実装支援、オープンイノベーション加速化事業、経済効果測定・データ分析。
大阪・関西万博2025への産学連携共同参画プロジェクトも展開。
京都大学含む10以上の大学・研究機関の教授・研究者と公認会計士・IRスペシャリスト・データアナリスト・プロダクトデザイナーなど実務のプロ集団が協働で企業のサステナビリティ経営の実装を支援している。
国際文化政策研究教育学会などと連携。 脱炭素経営促進ネットワーク (環境省) 支援会員

フェアトレードという言葉を耳にされたことはあるでしょうか。
フェアトレードラベルが貼ってある商品を見かけられた方もいるのではないでしょうか。

本コラムでは、企業が知っておきたいフェアトレードの定義・その事例・フェアトレード関係の認証制度を紹介します。

≪セミナー開催のお知らせ≫

当社では、下記セミナーを開催しております。ご興味のある方は、下記画像をクリックしご登録ください。

  • SDGsウォッシュ (売上激減!? 知らないと危険な“SDGsウォッシュ”とは )
  • 脱炭素経営セミナー (再エネ研究の大学教授と公認会計士が最新動向・投資コスト削減方法(最大7割引)を解説)
  • TCFD (プライム市場実質開示義務化のTCFDを公認会計士が解説)

目次

  1. フェアトレードとは
  2. フェアトレードの事例
  3. フェアトレード関係の主な認証制度
  4. そもそもSDGsとは

1. フェアトレードとは

まずは、フェアトレードとは何か、その意義やSDGsとの関係性などを見ていきましょう。

(1) フェアトレードとは

フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い発展途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易の仕組み」のことです。

(2) フェアトレードが必要な背景とその意義

発展途上国における劣悪な労働環境下での低賃金労働や児童労働・半強制労働などが社会問題となっています。

コーヒーや紅茶、バナナやチョコレート。
日常的に食べるたくさんの食べ物が世界の国々から私たちの手に届けられています。

日本では途上国で生産された日用品や食料品が、驚くほど安い価格で販売されていることがあります。
一方、生産国ではその安さを生み出すため、正当な対価が生産者に支払われなかったり、生産性を上げるために必要以上の農薬が使用され環境が破壊されたり、生産する人の健康に害を及ぼしたりといった事態が起こっています。

生産者が美味しくて品質の良いものを作り続けていくためには、自然環境にも配慮した取引のサイクルを作っていくことが重要です。
また、途上国の生産者の労働環境や貧困問題を改善するためには、途上国の人々が豊かに暮らせるだけの収入が保証されなければなりません。

そのような誰にとっても豊かで持続可能な生産サイクルを確立するには、環境にも配慮し開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入するというフェアトレードが非常に重要になってくるのです。

消費者は、フェアトレード商品を優先的に購入することで、間接的に発展途上国の労働問題を改善させ、労働者の安定した収入の確保を促し、生活改善に貢献することができます。

フェアトレードは、1960年代頃にヨーロッパでこの考え方が広がり、世界へと広がる運動になっています。

(3) フェアトレードとSDGsとの関係

フェアトレードは、SDGsの17の目標のほとんどすべてに関連しています。

フェアトレードジャパンによると、世界人口の40%は農業で生計を立てており、いまだ世界に1億5200万人いる児童労働の70%以上が農業に集中していると解説しています。

そのような環境下で、フェアトレードは、特に下記の8つの目標の達成に寄与するものとして近年非常に注目を浴びています。

(出所) フェアトレードジャパンホームページ

(4) フェアトレードの市場規模

フェアトレードジャパンによると、2016年、世界73ヶ国、1,411以上のフェアトレード認証生産者組織を通じ、国際フェアトレード認証製品の推定市場規模は、約78億8千万ユーロ(約9470億円以上)であったとあります。

また、日本での市場規模(2016年)は、113億6千万円まで拡大しているものの、欧米各国と比較するとまだまだ総額・一人当たり消費額とも十分に浸透していると言えないのが現状です。

(5) 企業にとってのメリット・デメリット

では、企業にとってのメリット・デメリットは何でしょうか。

① 企業にとってのメリット

フェアトレードを推進することは生産者に配慮し途上国を支援することと同義であるため、環境・社会配慮型の企業として消費者に対する企業のイメージアップにつながります。
また、ひいては、ESGに適合した取り組みにより投資家から評価され、ESG銘柄への選定等を通じて間接的な株価向上も十分に考えられます。

② 企業にとってのデメリット

フェアトレード商品は一般的に他の商品と比べて高い価格で原材料・製品を購入するため、調達コストがアップする傾向にあります。
そのため、資金力・調達力に余裕のない中小企業はなかなか取り組みずらいのは事実です。

また、国際認証等を取得する場合、認証の取得及びその維持のための追加コストもかかります。

企業はこのようなメリデメも考慮しながら、フェアトレード商品の導入を進めるか、導入するならどの商品群かを選定していくことになります。

2. フェアトレードの事例

次に、日本企業のフェアトレードの代表的な事例を見ていきましょう。

(1) スターバックスの事例

スターバックスは、20年以上前からフェアトレードに取り組み、2015年4月には提供するほぼすべてのコーヒーをエシカルに調達することを達成しており、世界で最も多くの国際フェアトレード認証(後述)のコーヒー豆を購買している会社です。
スターバックスにはC.A.F.E.プラクティスという調達ガイドラインがあり、指針にはコーヒー豆の品質だけでなく、「適正な価格が生産者に支払われていることを証明できること」「生産者の労働環境を守り、生活向上に貢献すること」「生産地の環境への影響を抑えること」というルールが設けられおり、生産者・環境に配慮した調達を基本原則としています。

(出所) スターバックスホームページ

また、スターバックスは、地元の生産者が高度な栽培技術に関するさらなる知識を得て、生産者をできる限り支援する長期的な解決策を模索するため、世界10か所にファーマーサポートセンターを運営しています。

(出所) スターバックスホームページ

2004年にコスタリカで世界初のファーマーサポートセンターを開設して以来、全世界で20万を超える生産者がスターバックスのプログラムを通じてトレーニングを行っており、生産者が安定的に生産し継続的に十分な収入を得ることのサポートを実施しています。

(2) イオンの事例

イオンはイオンのプライベートブランドで販売するすべてのカカオで使用する原料を持続可能性の裏付けがとれたものへと変換するという新たな目標を設定しています。

具体的には、下記のいずれか、もしくは両方を満たしていることが調達ルールとなっています。

  • イオンが認定する第三者認証を取得した原料を使用していること。
    (例)国際フェアトレード認証 など
  • 生産者や労働者の方々が抱える社会課題の解決に向けたプロジェクトを、イオンが直接、支援し生産地の持続的な発展に寄与していること。
    (例)生活・報酬面の課題解決、環境保全活動、労働環境の改善、教育機会の拡大 など
(出所) イオンホームページ

イオン(トップバリュ含む)ではフェアトレードに限らず、認証取得を受けた海産物など様々な環境・社会課題の解決に適合した商品の販売に力を入れています。

(3) ローソンの事例

MACHI caféでは、厳しい環境、社会、経済の基準を満たした農園に与えられるレインフォレスト・アライアンス認証のコーヒー豆のみを使用しています。

(出所) ローソンホームページ

2021年10月19日より、首都圏のナチュラルローソン店舗で、国際フェアトレード認証ラベル(後述)を取得したオリジナルショコラ商品3品を販売しています。

(出所) ローソンホームページ

(4) わかちあいプロジェクトの事例

わかちあいプロジェクトとは、フェアトレードと難民支援活動を通して開発途上国の人々を支える国際協力NGOのことです。
日本でフェアトレードの理念、フェアトレードラベル商品を広めることを目的に1992年に設立された団体で、ミャンマーやタンザニアなどの国の難民キャンプでの難民支援やミャンマーや南スーダンなどでの教育支援を通じた自立支援も行っている団体です。
当NGOはセレクトショップ通販サイトで、チョコレート・コーヒーだけでなく、雑貨やコスメ・化粧品などのフェアトレード商品の販売もしています。

(5) 日本生活協同組合連合会(コープ)の事例

日本生活協同組合連合会(コープ)は、昔からエシカル(倫理的)な消費活動を支援してきた日本の代表格です。
産地指定や国産素材を早くから明記するなど地産地消を進める取り組みだけでなく、認証の有無にかかわらず早くから生産者視点にたったフェアトレード取引を進めてきた団体であります。

正直なところ、世の中でフェアトレードが一般化しているかと言えばそうではありません
紹介した企業でも取扱商品がそれほど多くない場合もあります。
認証にコストがかかるという理由もありますが、消費者の認知度がまだまだ低いという理由も大いにあります。
ただ、SDGsの目標を達成するためにも、消費者の認知度が高まり、小売業などを中心に今後もフェアトレード商品が徐々に浸透していくことが望まれます。

3. フェアトレード関係の主な認証制度

最後に、フェアトレードに関連する国際認証制度を見ていきましょう。

(1) 主な認証制度 ~フェアトレード関係~

フェアトレードに関連する代表的な認証制度には、以下のようなものがあります。

このうち、本コラムでは日本で一番浸透している「国際フェアトレード認証ラベル」をご紹介します。

(2) 国際フェアトレード認証ラベルとは

国際フェアトレード認証ラベルとは

国際フェアトレード認証ラベルとは、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定めた、原料が生産されてから、輸出入、加工、製造工程を経て完成品となるまでの各工程で、国際フェアトレード基準が守られていることを証明するラベルです。

国際フェアトレード基準とは

国際フェアトレード基準とは、国際フェアトレードラベル機構によって設定されるフェアトレード全般に関する基準で、開発途上国の小規模生産者・労働者の持続可能な開発を促進することを目指して設計された基準です。
当基準には、「経済」「社会」「環境」の3つの原則があります。

国際フェアトレード基準の最大の特徴は、生産コストをまかない、かつ、経済的・社会的・環境的に持続可能な生産と生活を支える「フェアトレード最低価格」と生産地域の社会発展のための資金「フェアトレード・プレミアム(奨励金)」を生産者に保証している点です。
フェアトレード最低価格とプレミアムは、生産地域の物価・経済状況等と、買い手側の意見を考慮し綿密な調査と総合的な判断により、産品ごと、生産地域ごとに明確に設定されています。

主な対象品目

主な認証対象品目は、 コーヒー、紅茶、カカオ、スパイス・ハーブ、砂糖、大豆、蜂蜜、ナッツ類、果物、果物加工品など多岐にわたります。
詳細は、国際フェアトレードラベル機構のホームページの国際フェアトレード認証対象産品をご覧ください。

④ 認証・登録件数

2021年9月24日現在、日本の認証・登録組織117社あり、国内流通している認証製品は1,000点以上と言われています。
認証商品の一部は、国際フェアトレードラベル機構のホームページの製品情報検索で検索できます。

4. そもそもSDGsとは

(1) SDGsとは

SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界の国連全加盟国によって採択された国際社会共通の目標です。

(出所) 国連SDGs公式サイト

このサミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
この文書の中核を成す「持続可能な開発目標」をSDGsと呼んでいます。

知っておきたいSDGsの主な特徴は、以下の通りです。

  • 国連加盟国全193ヵ国が合意した目標
  • 発展途上国だけでなく、先進国も含めたすべての国に行動を求める世界全体の共通目標
  • すなわち、世界の共通言語であり、地域・世代を超えて対話できるコミュニケーション・ツール           
  • 目標年(2030年)具体的な数値も示した目標17の目標と169のターゲット)がある
  • 目標達成に法的義務はなく、取り組むか否か・その程度は各主体の判断に委ねられている
  • 国・自治体だけではなく、企業・その他の団体・個人のあらゆる主体が取り組むことが期待される
  • 「経済」、「社会」、「環境」の3つに関わる目標があり、同時両立による同時達成を目指す
  • 企業には、慈善活動・ボランティアだけでなく、本業の中で取り組むことが期待される

(2) SDGsの「17の目標」と「169のターゲット」とは

SDGsは「17の目標」と17の目標をより具体化した「169のターゲット」で構成されています。

当社は、公認会計士・CSRスペシャリストなどの専門家集団と大学教授などの学術研究者陣との協働による産学連携により、SDGsの研修・浸透、SDGs経営への移行を支援しています。
15分間無料相談などもしていますので、SDGsに関してお困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。

無料相談・お問い合わせ

SDGs導入、補助金申請など
当社へお気軽にご相談ください。

小林孝嗣

公認会計士
国際文化政策研究教育学会 会員
脱炭素経営促進ネットワーク (環境省) 支援会員

分科会への参加お申込み受付中

当社は、内閣府の設置した「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」において2つの分科会を主催・運営しており、随時参加者を募集しております。
分科会にご参加いただくには、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」への会員登録も必要です。
ご興味のある方は、一度弊社にお問い合わせください。

分科会について詳細はこちら

(免責事項)
  掲載する情報の正確さには細心の注意を払っておりますが、その内容について何ら保証し責任を負うものではありません。
  本コラムは、一般的な情報を掲載するのみであり、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。
  本コラムの作成後に、関連する制度その他の適用の前提が変動する可能性もあります。
  個別事案への適用には、本コラムの記載のみに依拠して意思決定されることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

無料相談・
お問い合わせ

脱炭素・SDGsや行動経済学によるデータ分析など
当社へお気軽にご相談ください。