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自己託送とは ~メリット・デメリット・投資コスト削減の秘訣など~
脱炭素化の機運も高まり、太陽光発電など再生可能エネルギーの活用の検討が進んでいます。
その中で、脱炭素をさらに進める手段として自己託送が注目を浴びています。
本コラムでは、自己託送の定義、利用要件、メリット・デメリット、託送料金の事例や活用事例などを紹介します。
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目次
- 自己託送とは
- 自己託送のメリット・デメリット
- 託送料金の事例
- 「自己託送制度」の活用事例
- 最大7割引になる太陽光発電の設備投資 ~補助金・税制~
- 『脱炭素』に係る関連コラム
- そもそも脱炭素(カーボンニュートラル)とは
1. 自己託送とは
(1) 自己託送とは
自己託送とは、平たく言うと、「遠隔地の自社発電所の電気を電気会社の送電線を使って自社の工場等に供給する」ことです。

正式な自己託送の定義は、以下の通りです。
- 「一般電気事業者がその保有する送配電ネットワークを使用して、工場等に自家用発電設備を保有する需要家が当該発電設備を用いて発電した電気を、当該需要家の別の場所にある工場等に送電するサービス」
現状、工場等の空きスペース・屋根・駐車場など工場等の敷地内に太陽光発電設備を設置するのが一般的です。
しかし、面積・耐震性・法令などの制約があり、採算性や手続きの煩雑性などの課題により導入をあきらめる会社も多いです。
そのため、最近は、敷地外の広大な未利用地などに太陽光発電などを設置し、送電線を介して自社の電力を賄う自己託送が注目を浴びています。
(2) 自己託送制度の利用3要件
自己託送制度は、誰でもどんな目的でも無制限に利用できるわけではなく、利用にあたっての条件があります。
その要件は、以下の3つです。
- 電気を販売する目的ではなく、自社利用を目的としていること
- 契約者と発電者、電気の供給先が同一会社の施設であること
- 同じグループ企業の施設など、”密接な関係”があること
詳細は、「電気事業法」・「電気事業法施行規則」をご覧ください。
(3) オフサイト型PPA(グループ外融通)は、自己託送制度の対象外に
「オフサイト型PPA」とは、敷地外で発電した電力を企業が自家消費するPPAのことであり、「オンサイト型PPA」 は、敷地内で発電した電気を企業が自家消費するPPAのことです。
自家消費や自己託送により使用された電気は、通常電気の購入時に請求される「再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金という)」 の支払いの対象外となり、このスキームを活用しない消費者の負担が高まるなど、公平性の確保などの観点からの課題があります。
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公平性の確保などの観点から、現在、発電所と需要場所が同一名義、もしくはグループ会社の場合、自己託送制度が利用可能ですが、同一名義かつグループ会社でない場合は自己託送制度は利用することができません。
(ただし、今後条件緩和される可能性あり)

2. 自己託送のメリット・デメリット
(1) 自己託送のメリット
まずはじめに、自己託送のメリットをみていきましょう。
① CO2排出量の削減 ~『RE100』対応&『追加性』あり~
自己託送は、再生可能エネルギーの増加に寄与する『追加性』にも整合するとともに、自家消費と同じ扱いになるため、『RE100対応』として認められます。
『再生可能エネルギー』×『自己託送』による企業のCO2排出量の削減効果があるため、脱炭素推進企業にとって有効な手段の一つであるといえ、『RE100対応』の環境配慮型企業であると対外的アピールになります。
② 電気料金の削減
~別ロケーションの複数の工場等の電力もカバー&再エネ賦課金・燃料調整費の削減~
【購入電気量】
電力の自家発電&自家消費により、電力会社から購入する電気量を減らすことができます。
また、自己託送を使えば、別ロケーションの複数の工場等の電力もカバーできるため、余剰電力を敷地外の工場に送るなどにより購入する電力量を格段に減らすことが可能です。
【単価】
太陽光発電の発電コストは減少傾向にあります。
さらに、電気会社から電気の購入には、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を維持するための再エネ賦課金が電力使用量に応じてかかりますが、自己託送にはかかりません。
最近上昇傾向にある再エネ賦課金(2021年 3.36円/kWh。東京電力より)は企業の負担になっており、電力使用量の多い企業ほど削減効果は大きいです。
したがって、『電気購入量』と『単価』の両面から電気料金の削減が可能です。

③ 遠隔所有地・地域の未利用資源の有効活用
オンサイト型の場合、余剰スペース不足、建物の耐震性の問題(屋上型太陽光発電)、建築基準法の問題(カーポート型太陽光発電)などの制約により、採算性・手続きの煩雑性の観点で導入をあきらめるケースもあります。
一方で、自己託送の場合、遠隔の未利用地や下記のソニー事例のように他社の所有資産に太陽光発電を設置することも可能となり、オンサイト型に比べて選択肢が一段と拡大します。
太陽光発電設備の設置を許可した企業にとっては、ソーラーパネルを設置する賃貸収入という副収入がえられ、双方メリットがあります。
④ エネルギーの地消地産
同一地域内から自己託送を行う場合、エネルギーの地産地消が図れ、地域の活性化に貢献できる場合もあります。
(2) 自己託送のデメリット
次に、自己託送のデメリットをみていきましょう。
① ペナルティ(インバランス料金)の発生の可能性
自己託送は送配電ネットワークの利用にあたり、30分ごとの送電量を事前に決めておく必要があります。
計画電気量に対し同時同量を達成できない場合、その差分(インバランス)に対する料金をペナルティとして支払う場合があります。
なお、2022年度からは新たなインバランス料金制度が開始される予定です。
② BCPの観点からの課題 ~非常用電源として機能しない可能性~
自己託送の場合、工場・オフィスで使用する電気は電力会社の送配電ネットワークを介して運ばれます。
台風などの災害時に電力会社の送配電ネットワークが機能しなくなった場合、電力が供給されず工場が停電になるリスクがあります。
非常用電源機能の面では、オンサイト型太陽光発電の方が望ましいです。
③ 低圧発電所は対象外
現在、自己託送が利用できるのは、非FITの高圧と特別高圧の発電所とされており、大規模な土地がない場合、自己託送制度は実質的に利用できません。

3. 託送料金の事例
自己託送するには、電力会社に託送料金を支払う必要があります。
例えば、主な電力会社の高圧標準接続送電に係る託送料金は、以下の通りです。
会社名 | 料金 |
---|---|
東京電力パワーグリッド | 料金表(2021年11月20日現在) 基本料金 : 555円50銭/1kW 電力量料金 : 2円34銭/1kWh |
中部電力パワーグリッド | 料金表(2021年11月20日現在) 基本料金 : 396円00銭/1kW 電力量料金 : 2円53銭/1kWh |
関西電力送配電 | 料金表(2021年11月20日現在) 基本料金 : 517円00銭/1kW 電力量料金 : 2円65銭/1kWh |
4. 「自己託送制度」の活用事例
最近の事例では、『”他社の所有資産”に太陽光発電を設置し自己託送』するパターンや『余剰電力を自己託送』するパターンなどがあります。
”未利用資産を保有する近隣企業・団体とのパートナーシップ”も選択肢の一つとして考えると、自己託送の選択肢は一段を広がります。
(1) ソニー ~牛舎からの自己託送~
ソニー敷地外の牛舎(愛知県東海市)の屋根に設置した約400kWの太陽光発電設備で発電したソニーグループの電力を、電力会社の送配電ネットワークを介し、約30km離れたソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社の幸田サイト(愛知県額田郡)へ供給(自己託送)することにより、この発電した電力の自家消費を実現します。

(2) 前橋市 ~清掃工場の余剰電力の活用~
前橋市は、六供清掃工場の余剰電力を活用した自己託送実証事業を行っています。

六供清掃工場で発電した電力の一部を、一般送配電事業者が運営する送配電ネットワークを介して市の施設に直接供給することで、前橋市としてCO2排出量がより少ない電力の積極的な活用と電力料金の低減を目指すものです。
自己託送を活用した電力供給を行うことで、今回の対象施設のCO2排出量が全体で約65%低減、また、電力料金も約10%低減する効果が見込まれているとあります。
5. 最大7割引になる太陽光発電の設備投資 ~補助金・税制~
実は、補助金と税制優遇措置をフル活用すると、最大約7割引で太陽光発電を導入できるケースもあります。

詳細は、別コラム「太陽光発電が最大7割引‼ 補助金・税制優遇を活用した脱炭素化」をご覧ください。

6. 『脱炭素』関連コラム
本コラム以外にも脱炭素に関連するコラムを公開していますので、併せてご覧ください。
テーマ | タイトルとリンク |
---|---|
株主総会・株主提案 | 揺れる株主総会 待ったなしの脱炭素対応 |
サプライヤー対応 | 避けると仕事がなくなる‼サプライヤーに求められる脱炭素経営 |
『脱炭素』×『税金』 | 税金が減る! SDGs・カーボンニュートラル関係の税制優遇措置 |
投資促進税制 | 大企業も対象!! カーボンニュートラルに向けた投資促進税制って何!? 補助金とセットで投資額圧縮 |
『脱炭素』×『税金』・『補助金』 | 補助金と税制優遇のダブルで恩恵! 低予算でできる脱炭素対応 |
サステナブル・ファイナンス | SDGs・脱炭素で金利引き下げ! 拡がるサステナブル融資 |
太陽光発電 | 太陽光発電が最大7割引‼ 補助金・税制優遇を活用した脱炭素化 |
ZEBの定義 | ZEBとは⁉ メリット・事例・投資コスト低減の極意も紹介 |
『建物』の脱炭素化 | 建物の脱炭素化が最大7割引‼ 補助金・税制優遇を活用したZEB化とは |
『データセンター』の脱炭素化 | データセンターの脱炭素化が最大6割引‼ 補助金・税制優遇を活用した設備投資 |
7. そもそも脱炭素(カーボンニュートラル)とは
(1) 脱炭素(カーボンニュートラル)とは
カーボンニュートラルとは、”二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、森林などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること”です。
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なお、2021年4月22日~23日に行われた気候変動サミットなどで各国が掲げた削減目標の一例は、以下の通りです。

日本も2030年までにCo2排出量を46%削減(2013年度比)するという非常に高い目標を掲げており、目標を達成するためには、国・自治体だけでなく、特に産業界の行動変容がカギとなります。
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(2) 政府がカーボンニュートラルを推し進める背景
では、なぜ政府はカーボンニュートラルを推し進めるために、税金を優遇し補助金を設けているのでしょうか。

それは、国際社会の中で決めたルールを守る責務もありますが、カーボンニュートラルによる変革が、”経済成長のために不可欠なカギ”、すなわち、”イノベーション創出を促すドライバー”と政府が捉えているためです。
2020年10年26日に、菅総理大臣が2050年にカーボンニュートラルや脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、経済産業省が中心となって「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しています。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」 で、下記のように政府が全力でカーボンニュートラルに取り組む背景が書かれています。
- 温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会ととらえる時代に突入したのである。従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長につながっていく。こうした「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策が、グリーン成長戦略である。
- 産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が数多く存在する。他方、新しい時代をリードしていくチャンスでもある。大胆な投資をし、イノベーションを起こすといった民間企業の前向きな挑戦を、全力で応援するのが、政府の役割である。
すなわち、過去は気候変動対策は経済成長への足かせと考えられてきましたが、政府は、気候変動対策は”成長の機会”と捉え、「グリーン成長戦略」を打ち出しています。
そのような国の動きに連動し、大胆な改革を行うチャレンジングな会社を後押しするため、政府は、予算・税制・金融・規制改革&標準化・国際連携などあらゆるものを総動員してカーボンニュートラルを押し進めているのです。
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(3) グリーン成長戦略とは ~14つの重要分野~
「グリーン成長戦略」では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、今後、産業として成長が期待され、なおかつ温室効果ガスの排出を削減する観点からも取り組みが不可欠と考えられる分野として、14の重要分野を設定しています。
エネルギー関連産業 | ①洋上風力、②燃料アンモニア、③水素、④原子力 |
輸送・製造関連産業 | ⑤自動車・蓄電池、⑥半導体・情報通信、⑦船舶、⑧物流・人流・土木インフラ、⑨食料・農林水産業、⑩航空機、⑪カーボンリサイクル |
家庭・オフィス関連産業 | ⑫住宅・建築物/次世代型太陽光、⑬資源循環、⑭ライフスタイル |
14分野は幅広く、成長のフェーズもそれぞれの分野で異なります。
そのため、政府は、分野ごとに2050年までの「工程表」も合わせてつくり、省庁横断で対応しています。
基本的には、政府は、この14分野に集中的に規制改革に加えて予算・税制の強化を図っています。
すなわち、自社の事業が14分野に関連する場合、補助金など様々な国からのサポートを受けられる可能性が高いです。
14分野に関連する場合、脱炭素推進のために活用できるプランがないか、関連省庁・自治体などのHPの閲覧などにより情報収集していきましょう。
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いかがでしたか?
自己託送型には様々なメリット・デメリットがあり、事例ごとにその度合いも異なります。
闇雲に脱炭素化のために自己託送を推進するのではなく、事例ごとに必要な情報を電力会社などから入手ししっかり検討することが、電力調達コスト・安定的な電力調達の観点からも重要です。
当社は、公認会計士・CSRスペシャリストなどの専門家集団と大学教授などの学術研究者陣との協働による産学連携により、SDG・脱炭素の研修・浸透、SDGs・脱炭素経営への移行を支援しています。
15分間無料相談などもしていますので、SDGs・脱炭素に関してお困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。
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本コラムは、一般的な情報を掲載するのみであり、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。
本コラムの作成後に、関連する制度その他の適用の前提が変動する可能性もあります。
個別事案への適用には、本コラムの記載のみに依拠して意思決定されることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。
≪自己託送×最新ニュース≫
・ 前橋市の清掃工場で発電 余剰分、市の別の施設に 料金節約、低炭素化へ 12月から実証実験(2021年11月5日)
引用元 : 毎日新聞
・ JFEエンジ、前橋市清掃工場の余剰電力を自己託送 CO2と電気料金削減(2021年11月02日)
引用元 : 日本経済新聞社
・ ソニー、太陽光の電力を自己託送 牛舎から工場に供給(2021年2月24日)
引用元 : 日本経済新聞社