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ZEBとは⁉ メリット・事例・投資コスト低減の極意も紹介
オフィスや商業施設の話をしてて、「ゼブ(ZEB)」というワードを聞いたことありませんか?
ざっくりいうと、ZEBとは脱炭素化が進んだ建物のことです。
実は、補助金と税制優遇措置をフル活用すると、最大約7割引で建物の脱炭素化ができるケースもあります。
本コラムでは、まずZEBを初めて聞いた方向けにZEBの定義やメリットなどを紹介します。
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目次
1. ZEBとは
- (1) ZEBの定義
- (2) ZEB化の必要性
- (3) Nearly ZEB, ZEB Ready, ZEB Orientedとは
- (4) ZEB化はどう実現するのか
- (5) ZEB化のメリット
- (6) ZEB化の事例
- (7) ZEBの制度・知識のよくある質問
- (8) ZEB化を検討している事業者の方へ
(1) ZEBの定義
ZEBとは、「Net Zero Energy Building」の略称のことで、「ゼブ」と呼びます。
快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物(オフィス・商業施設・店舗・データセンターなど)のことです。
建物の中では人が活動しているため、エネルギー消費量を完全にゼロにすることはできませんが、省エネによって使うエネルギーをへらし、創エネによって使う分のエネルギーをつくることで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることができます。
また、「創エネ」とは、エネルギーを作ることです。
ここでは、建物の屋上や壁に太陽光発電などの再生可能エネルギーでの発電を指します。
正式なZEBの定義は、環境省ホームページをご覧ください。
(2) ZEB化の必要性 ~事務所も脱炭素の対象~
① 排出量の現状と政府のZEB方針
業務部門(事務所ビル、商業施設などの建物)での最終エネルギー消費量は、日本全体の約20%を占めており、2016では1990年と比較して、産業部門からのCO2排出量は17%減少したにも関わらず、業務部門からのCO2排出量は66%増と大幅に増加しています。
そのため、業務部門でのエネルギー消費量を大きく減らすことができるZEBの普及が求められています。
そこで政府は、2018年7月に閣議決定されたエネルギー基本計画において、「2020年までに国を含めた新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現することを目指す」 としています。
② Scope2の対象となる事務所建物
企業としては、カーボンニュートラルの対象として生産過程の工場や営業施設に目が行きがちですが、本社・事務所・営業所についてもGHG(温室効果ガス)排出量の集計範囲(SBT Scope2)となります。
したがって、カーボンニュートラルに向けた取り組みを行っている会社は、これらの建物についても併せてGHG排出量の削減を図っていくことが重要になります。
(3) Nearly ZEB, ZEB ready, ZEB Orientedとは
ZEBには、エネルギー消費量削減率に応じて以下のような区分があります。
区分 | 判断基準イメージ |
---|---|
ZEB | エネルギーを自給自足 省エネ(50%以上)+創エネでカーボンニュートラル達成 |
Nearly ZEB | 省エネ(50%以上)+創エネで実質使用エネルギーを75%以上削減 |
ZEB Ready | 省エネ(50%以上)+創エネで実質使用エネルギーを50%以上削減 |
ZEB Oriented | ZEB Readyを見据えた建築物として、外皮の高性能 化及び高効率な省エネルギー設備に加え、更なる省エネルギーの実施に向けた措置を講じた建築物 (延べ面積が10,000㎡以上) |
正式なZEBの定義は、環境省ホームページをご覧ください。
(4) ZEB化はどう実現するの?
①エネルギーをつくる創エネと②使用エネルギーを減らす省エネの両方から実現を目指します。
一般的には、下図の下から「必要なエネルギーを減らす」⇒「エネルギーを効率的に使う」⇒「再生可能エネルギーを活用する」という手順で検討を進めます。
① 必要なエネルギーを減らす ~パッシブ技術の活用~
外皮断熱(高性能断熱材、高性能断熱・遮熱窓)・日射遮蔽・自然採光などをうまく活用して、まずは簡単にできる省エネの取り組みを行います。
② エネルギーを効率的に使う ~アクティブ技術の活用~
高効率空調・高効率照明などを利用し、人がいるときだけ、または、人がいるエリアを集中的に冷却するなど最新技術を活用しながらさらなる省エネを行います。
③ 創エネ ~太陽光発電・バイオマス発電など~
オフィスビルや商業施設の屋上や壁面に太陽光発電を設置したり、バイオマス発電などを活用することにより、再生可能エネルギーによる創エネを行います。
なお、太陽光の設置に当たっては、様々な法律的又は環境的な制約条件があります。
設置の検討に当たっては、制約条件も併せて考慮していきましょう。
(5) ZEB化のメリット
① オーナーにとって ~差別化・外資系企業を狙うには必須要件~
カーボンニュートラルに向けた目標を掲げる企業が大企業を中心に急増しており、その事務所選定においても今後ZEB化の程度が重要なテナント選定基準の一つとなりつつあります。
また、脱炭素化の取り組みが進んでいる外資系企業では、あるビルが100%再生可能エネルギーでなかったため入居を断念したという事例も出てきています。
外資系企業のテナント誘致には、ZEB化が必須という時代も近いでしょう。
② 事業者にとって ~SBT・RE100達成に向けた取り組みの一環・環境企業PR~
工場だけでなく、事務所や営業施設もGHG排出量測定の範囲(SBT Scope 2)であり、企業が掲げた脱炭素目標を実現させるには事務所などのZEB化も重要な検討項目の一つです。
また、既にZEB化した建物の中には年数千万円単位でのコスト削減をできた事例もありますし、太陽光と蓄電池などを組み合わせればBCPの観点でも優れていると言えます。
さらに、環境に優しい施設を利用することで、環境配慮型の企業であることのPRも図れます。
(6) ZEB化の事例
「ZEB」の事例としては、例えば「久光製薬ミュージアム」などがあります。
このミュージアムは、ガラスを多用した意匠デザインに対し、熱負荷を大幅に軽減する全面Low-Eガラスなど従来からあるさまざまなZEB化技術を組み合わせて『ZEB』を実現しています。
その他、環境省ホームページ「事例紹介」及び一般社団法人環境共創イニシアチブホームページ「ZEB事例で検索」で他の事例も紹介されていますので、そちらもご覧ください。
(7) ZEBの制度・知識のよくある質問
環境省ホームページ「ZEB PORTAL」でよくある質問が取りまとめられていますので、そちらをご覧ください。
(8) ZEB化を検討している事業者の方へ
環境省ホームページ「ZEB PORTAL」でZEB化実現までの流れ(一例)が取りまとめられていますので、そちらをご覧ください。
また、一般社団法人環境共創イニシアチブ「ZEB事例で検索」では、378件(2021年10月28日現在)のZEBが紹介されており、建物の用途・規模・ZEBランク別の検索が可能で仕様等も細かく記載されていますので、自社のZEB化の検討の際に参考事例としてご覧ください。
2. ZEB化が最大7割引‼ 使える補助金と税制優遇など
ZEB化には投資が多額で躊躇する会社も多いです。
実は、ZEB化に係る補助金・税額控除をフル活用すると、最大7割引で設備投資できるケースもあります。
また、グリーンファイナンスによる金利優遇のメリットや対外PRによる企業のイメージアップなどにより、様々な副次的効果も期待できます。
詳細は、下記の別コラムをご覧ください。
補助金・税制優遇制度 : 「建物の脱炭素化が最大7割引‼ 補助金・税制優遇を活用したZEB化とは」
グリーンファイナンス : 「SDGs・脱炭素で金利引き下げ! 拡がるサステナブル融資」
3. そもそも脱炭素(カーボンニュートラル)とは
(1) 脱炭素(カーボンニュートラル)とは
カーボンニュートラルとは、”二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、森林などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること”です。
なお、2021年4月22日~23日に行われた気候変動サミットなどで各国が掲げた削減目標の一例は、以下の通りです。
日本も2030年までにCo2排出量を46%削減(2013年度比)するという非常に高い目標を掲げており、目標を達成するためには、国・自治体だけでなく、特に産業界の行動変容がカギとなります。
(2) 政府がカーボンニュートラルを推し進める背景
では、なぜ政府はカーボンニュートラルを推し進めるために、税金を優遇し補助金を設けているのでしょうか。
それは、国際社会の中で決めたルールを守る責務もありますが、カーボンニュートラルによる変革が、”経済成長のために不可欠なカギ”、すなわち、”イノベーション創出を促すドライバー”と政府が捉えているためです。
2020年10年26日に、菅総理大臣が2050年にカーボンニュートラルや脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、経済産業省が中心となって「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しています。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」 で、下記のように政府が全力でカーボンニュートラルに取り組む背景が書かれています。
- 温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会ととらえる時代に突入したのである。従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長につながっていく。こうした「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策が、グリーン成長戦略である。
- 産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が数多く存在する。他方、新しい時代をリードしていくチャンスでもある。大胆な投資をし、イノベーションを起こすといった民間企業の前向きな挑戦を、全力で応援するのが、政府の役割である。
すなわち、過去は気候変動対策は経済成長への足かせと考えられてきましたが、政府は、気候変動対策は”成長の機会”と捉え、「グリーン成長戦略」を打ち出しています。
そのような国の動きに連動し、大胆な改革を行うチャレンジングな会社を後押しするため、政府は、予算・税制・金融・規制改革&標準化・国際連携などあらゆるものを総動員してカーボンニュートラルを押し進めているのです。
(3) グリーン成長戦略とは ~14つの重要分野~
「グリーン成長戦略」では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、今後、産業として成長が期待され、なおかつ温室効果ガスの排出を削減する観点からも取り組みが不可欠と考えられる分野として、14の重要分野を設定しています。
エネルギー関連産業 | ①洋上風力、②燃料アンモニア、③水素、④原子力 |
輸送・製造関連産業 | ⑤自動車・蓄電池、⑥半導体・情報通信、⑦船舶、⑧物流・人流・土木インフラ、⑨食料・農林水産業、⑩航空機、⑪カーボンリサイクル |
家庭・オフィス関連産業 | ⑫住宅・建築物/次世代型太陽光、⑬資源循環、⑭ライフスタイル |
14分野は幅広く、成長のフェーズもそれぞれの分野で異なります。
そのため、政府は、分野ごとに2050年までの「工程表」も合わせてつくり、省庁横断で対応しています。
基本的には、政府は、この14分野に集中的に規制改革に加えて予算・税制の強化を図っています。
すなわち、自社の事業が14分野に関連する場合、補助金など様々な国からのサポートを受けられる可能性が高いです。
14分野に関連する場合、脱炭素推進のために活用できるプランがないか、関連省庁・自治体などのHPの閲覧などにより情報収集していきましょう。
当社は、公認会計士・CSRスペシャリストなどの専門家集団と大学教授などの学術研究者陣との協働による産学連携により、SDGs・脱炭素の教育・浸透、SDGs・脱炭素経営の推進を支援しています。
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本コラムは、一般的な情報を掲載するのみであり、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。
本コラムの作成後に、関連する制度その他の適用の前提が変動する可能性もあります。
個別事案への適用には、本コラムの記載のみに依拠して意思決定されることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。