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SDGs担当に任命‼ 最初にしたい5つの基礎的な取り組み

執筆者:小林孝嗣

公認会計士/㈱文化資本創研 代表取締役社長
国際文化政策研究教育学会 会員

㈱文化資本創研とは
サステナビリティ経営のための産学連携会社。
主な事業は、SDGs・脱炭素経営の実装支援、オープンイノベーション加速化事業、経済効果測定・データ分析。
大阪・関西万博2025への産学連携共同参画プロジェクトも展開。
京都大学含む10以上の大学・研究機関の教授・研究者と公認会計士・IRスペシャリスト・データアナリスト・プロダクトデザイナーなど実務のプロ集団が協働で企業のサステナビリティ経営の実装を支援している。
国際文化政策研究教育学会などと連携。 脱炭素経営促進ネットワーク (環境省) 支援会員

“SDGs担当に任命されたが、何から手を付けていいかわからない。”

このようなお話をよく耳にします。

メディアでSDGsを目にする機会は多いと思いますが、”SDGsの取り組みを実りあるものにするために何から始めるか”、なかなかイメージしずらいと思います。

本コラムでは、SDGsの取り組みをスタートするにあたって、まず最初に着手したい5つのことを紹介します。

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目次

  1. SDGsを知る
  2. 仲間を増やす
  3. 社内意識の把握
  4. ロードマップの策定
  5. SDGs導入の宣言

SDGsの取り組みは、以下の5つのステップからスタートするといいでしょう。

まず最初に着手したいSDGsの5つの取り組みについて、1つずつご紹介します。

1. SDGsを知る ~基礎知識のインプット~

”SDGsを初めて学ぶのに、どのように情報収集したらいいかわからない。”
このようなお困りごとをお持ちの担当者も多いと思います。

この章では、SDGsの基礎知識をインプットする方法をご紹介します。

(1) SDGsとは

SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界の全加盟国によって採択された国際社会共通の目標です。
このサミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
この文書の中核を成す「持続可能な開発目標」をSDGsと呼んでいます。

知っておきたいSDGsの主な特徴は、以下の通りです。

  • 国連加盟国全193ヵ国が合意した目標
  • 先進国だけでなく、発展途上国も含めたすべての国に行動を求める世界全体の共通目標
  • すなわち、世界の共通言語であり、地域・世代を超えて対話できるコミュニケーション・ツール           
  • 目標年(2030年)具体的な数値も示した目標17の目標と169のターゲット)がある
  • 目標達成に法的義務はなく、取り組むか否か・その程度は各主体の判断に委ねられている
  • 国・自治体だけではなく、企業・その他の団体・個人のあらゆる主体が取り組むことが期待される
  • 「経済」、「社会」、「環境」の3つに関わる目標があり同時両立による同時達成を目指す
  • 企業には、慈善活動・ボランティアだけでなく、本業の中で取り組むことが期待される

当社は、SDGsに関わる情報を別ページ 『SDGsの基礎を知りたい』でご紹介しています。
SDGsの基礎について体系的に学びたい方は、『SDGsの基礎を知りたい』 をご覧ください。

(2) 一度は見ておきたいSDGsのwebサイト・ガイドライン

① 一度は見ておきたいSDGsの公的webサイト ~国連、日本政府、経団連など~

SDGsの採択主体である国連のほか、外務省・経産省・環境省など様々な日本政府の省庁がSDGsに重点を置き、情報発信をしています。

忘れてはならないのは、経団連が積極的に取り組んでいることです。

高度経済成長期においては、『経済』と『社会』・『環境』とは分離して考えられていましたが、環境なども重視したESG投資の浸透などもあり、 現在は『経済』・『社会』・『環境』 は一蓮托生で考え、同時両立・達成を目指すことが経済界全体として浸透しつつあります。
経団連のサイトには、『SDGs事例集』などがあるので、他社の動向や経済界全体としての方向性をフォローする意味でも定期的に拝見されることをおすすめします。

② 一度は見ておきたい代表的なSDGsのガイドライン ~SDGsコンパス~

SDGsを促進させるために作成された代表的なSDGsのガイドラインは、以下の通りです。

環境省が作成した『持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド』は、SDGsの概要・今経営に必要な理由・ケーススタディによる事例紹介など、非常にコンパクトにまとめられたガイドラインで、SDGs初心者が一読する価値があります。

また、『SDGコンパス』もよく利用されています。

出所:SDGコンパス

『SDGコンパス』は、企業のSDGs導入指針として発行されたもので、従来の社会・環境に関する国際的手引きとは異なり、”企業がSDGsを企業経営に組み込むことのメリット”がステップごとに明示されている。
少し概念的ですが、SDGsの実装を5つのステップで説明し、”SDGs導入の各フェーズで何を検討しなければいけないか”が端的にまとめられています。
SDGs導入のためのロードマップを策定する際に利用するケースが多いです。

③ マッチングも可能なSDGsコミュニティ ~地方創生SDGs官民連携プラットフォーム、関西SDGsプラットフォーム~

SDGsに関心のある団体(自治体、企業、NPOなど)が集まるコミュニティ(プラットフォーム)も存在します。
代表的なSDGsプラットフォームは、以下の通りです。

SDGsプラットフォームでは、以下のことも可能です。

  • セミナー・分科会への参加によるインプット
  • 企業のマッチング支援
  • SDGsのイベント告知

SDGs情報のインプット・発信だけでなく、企業のマッチングなども頻繁に行われているため、SDGsに関わるコラボ・オープンイノベーションの創出や自社のSDGs取り組み事例の発信強化を図るツールとして利用する会社もあります。
いずれも無料ですので、入って損することはありません。

さらに詳しいリンク集は、別コラム「SDGs・CSR担当必見‼ SDGs関連リンク集」をご覧ください。

(3) 外部セミナーの受講

SDGsの本質を深く理解し、企業経営に組み込むことは至難の業といえます。
そこで、自己習得だけでは不十分だと考えられる場合は、外部のセミナーを受けることをおすすめします。

様々な団体がSDGsに関連するセミナーを実施しています。
研修主体を選ぶ際は、下記の基準なども参考にしながら選ぶとよいでしょう。

  • 研修が17の目標の記憶などの表層的な理解だけでなく、事業への落し込みもイメージできるか
  • 研修だけでなく、SDGs経営の実装や対外PRまでの企業価値の向上につながるサポートが受けられるか
  • 信頼できる情報を持っているか

2. 仲間を増やす ~推進体制の確立とコアメンバーのSDGs教育・浸透~

(1) 関連部門を巻き込む ~SDGsは、バリューチェーンのあらゆる段階に関わる~

SDGsは、単なるボランティアや慈善活動の延長ではないため、 IR・CSR・広報部門だけで完結できるものではありません

SDGsは、事業に組み込んで、本業の活動の中で企業の経済成長と社会課題解決の同時達成が望まれるものであり、企業のバリューチェーンのあらゆる部署が関連するため、経営企画・経営管理・調達・物流・販売・アフターフォローなどバリューチェーンのあらゆる部署の積極的な協力・エンゲージメント(関与)が非常に重要です。

出所:SDGsコンパス

(2) サプライチェーンも巻き込む ~Appleのサプライヤーに対する脱炭素要請~

また、子会社・関連会社・取引先も含んだサプライチェーン全体で考える課題もあります。

例えば、SDGsの目標の中には、Appleのサプライヤーに対する2030年カーボンニュートラル(脱炭素)達成の要請のように、サプライチェーン全体として対応するものもあります。
サプライチェーンベースで求められる脱炭素対応については、別コラム 『避けると仕事がなくなる‼サプライヤーに求められる脱炭素経営』をご覧ください。

SDGsは、まず自社のみで取り組みをスタートさせるのが一般的ですが、SDGsの取り組みの強化のためには、将来的にサプライチェーンも巻き込む可能性があることも頭の片隅に置いておきましょう。

(3) SDGs推進体制の立ち上げ ~社長直轄・部門横断的な機能的組織~

SDGsをうまくスタートするには、関連部署や必要に応じてサプライチェーンも巻き込み、しっかり目標を見据えた十分な推進体制の確立が重要なカギを握ります。

SDGsの推進体制は、業種特性、企業規模、社風、社会的要請の大きさ等などをもとに決定します。
具体的には、以下のようなことも考慮しながら、推進体制を構築します。

  • マネジメント直轄
  • 推進部門に十分な権限と責任を付与
  • IR・CSR部門と有機的に連携できる体制
  • 本業と密接し、長期的な事業戦略立案ができる体制
  • 必要に応じて、社内横断的かつ実務的な議論ができる機能的組織(プロジェクトチームなど)を設置
  • サプライチェーン全体での推進体制も想定
  • 定期的な体制の見直し

(4) コアメンバーの教育・研修 ~表層的ではない本質をついた体系的な研修を~

SDGsの推進体制が決まれば、推進メンバーの教育・研修です。

SDGsの17の目標を使ったカードゲーム研修などが一般的によくされますが、SDG経営の実装を目指す会社にとってはあくまで導入部であり不十分です。
SDGsのうわべをなぞるだけの研修では 、複数の部署から参集したSDGs推進メンバーの納得感や全面的な協力は得られません

信頼性のあるエビデンスを示しながら、 ”SDGsの本質は何か”、 ”なぜSDGsを取り組むのか”、”SDGsを取り組むことの企業価値・社会貢献度へのインパクト”などを体系的に丁寧に伝えていくこと
それこそが、 様々な現場部門から集まったプロジェクトチームに団結力を与え、プロジェクトを成功させる唯一の方法です。

必要に応じてSDGs経営の実装に長けた専門家を招聘することにより、SDGsの本質が理解できるしっかりした教育・研修を取り入れましょう。

3. 社内意識の把握 ~SDGs社内意識調査による課題の抽出~

次に、SDGsの社内意識調査をします。

SDGsの浸透度や捉え方は、一般的に世代・性別・部署・役職などによって違います
優先順位が高いと想定されるSDGsの目標に関連する事業エリア・部署などがどこか想定しながら、効果的な質問の設定により、SDGsを推進する上で”注力すべきポイント”や”ボトルネックになりそうな課題”などを事前に抽出します。

また、実施した社内意識調査の結果はマネジメント層だけでなく社員にも公表し、”自社の現在地”と”今から登る山”とを比較し、社員のSDGsへの関心・コミットメントを高めていきましょう。

4. ロードマップの策定 ~SDGs経営移行に向けた羅針盤の策定~

推進体制の構築・社内意識調査による大局的な課題抽出が終わったら、SDGs経営移行のためのロードマップを策定します。

このロードマップ策定の際、既に紹介した 『SDGコンパス』が役立ちます。

出所:SDGコンパス

『SDGコンパス』 の5つのステップのすべてのフェーズに関わるロードマップを一気に策定するのが難しい場合は、特定のステップまでは具体的な実施時期・実施項目・担当部署など詳細なプランを策定し、その後のステップについては大まかな方向性のみを決めておく方法もあります。

いずれにせよ、最終的なゴールをイメージしながらSDGsの取り組みを進めることが非常に重要です。

5. SDGs導入の宣言 ~社内に向けたトップのメッセージの伝達~

最後に、企業のトップから社員へのメッセージ発信です。

SDGsの方向性が決まった段階で、会社HPなどで対外的なSDGs導入宣言をする会社も多いです。

しかし、その前に経営者によるコミットメントとその覚悟の社内発信が重要です。
SDGsの取り組みは長期にわたる経営に根幹に関わる部門横断的な対応も求められる取り組みなので、社内の雰囲気づくりがとても大切です。
企業トップと社員とが ”いまなぜSDGsに取り組むか”じっくりと対話することが非常に重要です。

SDGsを”慈善活動の延長線上の取り組み”や”宣伝のツール”と安易に捉えてはいけません
SDGsは、”世界の関心事を集めた世界の人が共感するルールブック”です。
”本業のビジネスリスクとビジネスチャンスの分析の最良のツール”と捉えうまく利用し、”地域・世代を超えて新たなファンを創るための発信型コミュニケーション・ツール”として活用すれば、必ず本業の持続的成長に貢献します


SDGsを本業に組み込むには、社員の積極的なエンゲージメントが欠かせません

企業トップと社員とが一致団結して、SDGsを羅針盤に会社のパーパス(存在意義)を問い直す。
その中で、将来の会社・事業のあるべき姿をみんなで考える。
SDGsを通じて企業理念の浸透を図り、会社が一つのゴールに向かって走り出すエンジンを生み出すことこそがSDGsに取り組む価値の一つです。

当社は、公認会計士・CSRスペシャリストなどの専門家集団と大学教授などの学術研究者陣との協働による産学連携により、SDGsの研修・浸透、SDGs経営への移行を支援しています。
15分間無料相談などもしていますので、SDGsに関してお困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。

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SDGs導入、補助金申請など
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小林孝嗣

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